Where we belong.=【家を知る・家に住む・この家で生きる】

そして、私たちの「居場所」について。

【炎】=心が鎮まる「“1/f”のゆらぎ」効果。

 
 

 

 

 

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人類が初めてエネルギーとしての【火】を利用するようになったのは、いまから約50万年前のこと。暖かく、煮炊きもできる【火】はやがて、暮らしに欠かせないものとなり、その【火】を雨風から消さないために屋根ができ、囲いが工夫され、家の原型ができました。眺めているだけで落ち着くのは、私たちの家と暮らしの原点を感じるからかもしれません。

 

Contents.

 

日本の家の中心【竈=かまど】

文字通り、釜をかける場所であり、囲炉裏とともに家を象徴する火所とされてきた「竈(かまど)」。

 

囲炉裏は主に東日本に多く、竈は中国から入ってきたことから、最初は西日本を中心に広まったといわれます。

 

古い民家では、いまも囲炉裏が残っていますが、調理だけではなく、照明や暖房を兼ねた複合的な機能がうかがえます。

 

所帯数のことを「竈数」、分家することを「竈分け」といい、家を建てることを「竈を起こす」、一家が破産することを「竈を返す」というように、日本の家制度のなかでは「竈」は常にシンボル的な存在でした。

 

竈のある空間には、こわい顔をした「竈神」が祀られています。

調理、採暖、照明、団らんなど、家のなかで同じ火を囲み、同じ火で調理された食物を食べる家族を結びつけ、一家をの安寧を司る存在として神格化されてもきたのです。

 

西日本では「竈神」を「荒神」「三宝荒神」とも呼び、この神様は気性が荒いことで知られています。

「三宝荒神」とは仏教的に仏法僧(仏=仏様 法=教え 僧=お釈迦様の教えを守る人)の三宝を守る神様で、三宝を大切にする人や法華の修行者を守護するとされます。

 

正しく信仰すれば霊験あらたかというのが特徴で、農業の神としても信仰されてきました。

炊事の守り神としての役目は、日々の生活の糧ともなる食料とも深く関係していることを表わしています。

 

 

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家にいながら異界と交信する

味噌豆を煮たり、たくさんの料理を必要とするハレの日には、この竈が活躍しました。同じ火で調理されたものを食べるのは同族であり、一つの火で家族は結ばれていたのです。

 

キャンプなどでも、同じ火を囲むと、仲間意識が深まってくるのがわかります。

彼や彼女だったら、その夜を境に、もっと絆が深まることでしょう。

 

折口信夫によれば「火」は日、陽、脾、桧、坯に通じ、魂の発動の様子を表わし、火を絶やさないために、火を覆って屋根をかけ、それが日本の家の原型となったとしています。

火を覆い、その場を中心として、寝る、食べるなどその他の機能を持った場所が加わっていったのでした。

 

日本の家では「竈神」のほかにも、先祖神、屋敷神などの主神、厠神(便所神)などが一つ屋根の下で共存していました。

 

神様という以上、私たち人間と同じ世界にいる存在ではなく、異界に住む方々。日本人は古来から、家のなかで異界とのコミュニケーションをとってきたともいえます。

 

家は自然界と遮断することを目的としたものですが、そこに神様の居場所をつくり、それを軸に家族が結ばれ、異界とのコミュニケーションを絶やさなかったところに、日本人の信仰の原点がうかがえます。

 

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 暖炉が創った全館暖房の文化

ヨーロッパでは、調理や暖房、明かりを保つ機能を有した暖炉やストーブが家の火所でした。

 

11世紀以降の家では、一般に、母屋には居間と寝室が設けられ、居間には炉が設けられるようになります。

炉は、煮炊きもでき、暖房の役割も果たしました。

 

やがて、壁を背にして炉が置かれるようになり煙を排出するために、煙突をつけた「暖炉」が生まれます。

 

もともと石造りの家は連続して火を焚いても安全性は高く、火を絶やさないことで石が常時暖められ、そこからの輻射熱を利用することで、全館どこでも暖かい(正確には寒くない)温熱環境が生まれます。

 

アイヌの伝統的な家屋「チセ」でも、四季を通して火を絶やすことはなく、同様の効果があったことと想像できます。

 

連続して火を焚いていることで、室内の汚れた空気を煙突から排出することもでき、計画換気の役割を果たしていたことがわかります。

 

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暖房よりも採暖を選んだ日本

中世ヨーロッパでは、暖炉はステイタスの象徴となりますが、17世紀の半ばには、イギリスで煉瓦を焼く技術が進歩して庶民にまで普及します。

 

ロシアで生まれたペチカも徐々に西へと広がりました。

産業革命によって鉄が大量に生産されるようになると、移動可能な鉄製の「置き暖炉」=ストーブ=が登場します。

 

暖房の主役は暖炉からストーブへと変わり、近代に入って都市部に集合住宅が増えると、集中暖房=セントラルヒーティングが増加。

ここでも全館暖房(屋内に寒い場所がない)が徹底されます。

 

日本はいまでも採暖文化のままですが、ヨーロッパではこうして火所が暖炉となり、全館暖房の発想がそのまま集合住宅でも応用されてきた経緯が見てとれます。

 

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キャンドルで1/fゆらぎを満喫

日本でもヨーロッパでも家のなかの火所が失われつつありますが、欧米ではキャンドルを使った文化が、暮らしのなかで根強く息づいています。

 

ヨーロッパのスーパーマーケットやデパートに行くと、キャンドルコーナーの売り場の広さやそのバリエーションの豊富さに驚きます。

 

夕食時や夕食後の家族だけの時間を、キャンドルの炎を囲みながら過ごすことは、気軽に楽しめる炎の文化でもあります。

 
日本では、スーパーマーケットに行っても、キャンドルを扱うところはあまりなく、仏壇用のロウソクしかないことが文化の違いを物語っているようです。

 

薪ストーブが人気ですが、それなりの設置場所が必要なこと、100万円前後のコストがかかることなどから、誰もが簡単に購入することはできません。

 

その点、キャンドルは、近くに専門店がなくても通販などで数百円から簡単に入手できますし、今日からすぐに自宅で楽しむことができます。

 

薪ストーブでもキャンドルでも同じですが、炎を眺めているだけで気持ちが落ち着いてきます。

炎の不規則な動きは、人間の脳を落ちつかせる “1/f”のゆらぎ効果があるのです。

キャンドルを灯すことで、その場にマイナスイオンも発生します。
1/fゆらぎ=「人の心拍の間隔、ろうそくの炎の揺れ方、電車の揺れ、小川のせせらぐ音、目の動き方、木漏れ日、蛍の光り方などがある。また物性的には、金属の抵抗、ネットワーク情報流が例として挙げられる」(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
 
ときには蛍光灯を消して、灯りを囲む時間も素敵です。
家族の顔が、こんなにもやさしかったんだと、きっと気づくはず。
いまの日本は、明る過ぎます、どこに行っても、です。
 
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とめ
 1.日本では 家のなかで同じ火を囲み、同じ火で調理された食物で家族が結ばれてきた。「竈(かまど)」は、「竈数」「竈分け」「竈を起こす」「竈を返す」など常に家族を象徴する存在だった。

 

2.日本の家では「竈神」のほかにも、先祖神、屋敷神などの主神、厠神(便所神)などが一つ屋根の下で共存し、日本人の信仰の原点がうかがえる。

 

3.ヨーロッパでは、暖炉やストーブが家の火所となり、調理や暖房の役割を果たし、全館暖房、計画換気の基礎となった。

 

4.キャンドルの炎の不規則な動きは、人間の脳を落ちつかせる “1/f”のゆらぎ効果がある。マイナスイオン効果もあり、放出されるマイナスイオンの数は森林や滝から放出される量を上回る。


 5.薪ストーブは高価だが、キャンドルは手軽に「火」のよさを味わえるツール。日常でもっと活用したい。