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【災害と住宅】=「オール電化」は「災害時に脆弱」とは限らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

地震や台風などの災害時、停電が長引くたびに必ず流れるのが「オール電化住宅は災害に弱い」というニュース。停電になったら、調理もできない、冷暖房もストップ、給湯も使えない――というのが理由なのでしょうが、現実には、停電になったら、灯油のファンヒーターもガス給湯器も、固定電話(黒電話以外)も使えません。正しい情報かどうかをシミュレーションするためにも、少しひねくれているかもしれない情報の捉え方。

 

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災害時にも復旧が早い電気

日本は地震大国です。

阪神・淡路大震災(M7.3 1995)や新潟県中越地震(M6.8 2004)、東日本大震災(M9.0 2011)はまだ記憶に新しく、熊本地震(M7.3 2016)や北海道胆振東部地震(M6.7 2018)なども記憶に新しいところ。

現在は、毎日のように豪雨被害が報道されています。

 

災害のたびに、多くの家が停電や断水などで不自由な生活を強いられます。

そして災害が起きるたびに「オール電化住宅は不利」といったニュースが流れてきます。

 

ニュースの内容は正しいところも、正しくないところもあります。

 

オール電化住宅とは、文字通り、冷暖房・給湯・調理の熱源を全て電気とした住宅。

停電になると冷房、暖房、エコキュート=給湯もIHクッキングヒーターも使えません。

 

しかし、電気が止まると、一般の住宅でも、エアコンはもちろん、開放式以外の灯油を使うストーブ、ファンヒーター、ガス給湯器も使えないのです。もちろん、電話もFAXも、テレビも冷蔵庫もパソコンも使えません。

 

熱源は灯油やガスでも、動力には電気が必要な場合が多いのです。

 

大きな災害時はガスや水道も止まってしまいますが、最も復旧が早いのは電気。阪神淡路大震災の際、神戸市では水道の復旧に90日、ガスで85日かかったのに対し、電気は7日間で使えるようになりました。

東日本大震災で被害が大きかった仙台市では、全域がほぼ復旧するのに水道が約30日、ガスが約50日だったのに対し、電気は約10日で復旧しています。

 

地域によって差はあるものの、復旧までの期間を考慮すると電気の優位性は無視できず「オール電化住宅は災害時には不利」という内容が、必ずしも正しいわけではないことがわかります。

 

 

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Photos by Sweet Potato..

躯体をすっぽり断熱・気密化することで大空間でも温度分布はほぼ均一となり、停電などで冷暖房が使えなくても、すでに蓄熱された熱だけで数日間は安全な温度が保たれる。

 

 

 

 

 

 

電化の利点を引き出す住宅

2011年に起きた東日本大震災の直後、北東北に向かい、5軒のオール電化住宅を取材しました。

正確には、取材したお宅がたまたま全てオール電化住宅だったのです。

 

3月上旬の北東北はまだ厳寒期。

暖房をオフにすることなど100%ありません。

 

結論から先に述べますと、停電にもかかわらず室温が18℃以下になっているお宅は1軒もなかったのです。

 

正確に家の各所の温度を計測したわけではありませんが、少なくとも、リビングが18℃以下になっている家はありませんでした。

 

北海道や東北のオール電化住宅の多くは、建物本体の断熱・気密性能の確保を前提に建てられ、電化「設備」だけを採用すればオール電化と呼ぶ関東以西とは、一線を画しています。

 

当時の住宅性能でいうと、熱損失係数=Q値1.6―1.9W/㎡・K前後、相当隙間面積=C値0.5―1.0㎠/㎡が平均値かと思われますが、この数値は以前ご紹介した次世代省エネ基準の北海道仕様とほぼ同じレベルです。

 

逆にいえば、このレベルの断熱性能がないと、電気の弱い熱で暖房などできないのです。

 

地震直前まで屋内で蓄えられた熱と、日中わずかな日射を取り入れるだけで、震災後、約1週間も暖房なしでも家族を守り続けたこの事実は、あまり知られてはいません。こうした報道は、いまだ見かけることはないようです。

 

ちなみに、人間も一人が約100Wの発熱体。狭い部屋に4人集まると400Wの電気ストーブ1台分の熱が得られます。

こうした知識があれば、少しは家族の生命を守ることにも貢献できそうです。

 

 

 

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Photos by Sweet Potato..

開口部を含む構造体の断熱性能を高めつつ、日射を取り込み、床などに蓄熱する手法をダイレクトゲインという。昼間に蓄えた熱は日没後から翌朝まで暖房機の役割を果たしてくれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ベストという選択肢はない

冬期、蓄積された輻射熱との相乗効果で、外気温がマイナス10℃でも、屋内は15℃~18℃の室温を保つことは可能です。

高断熱・高気密とは、熱を出入りさせないだけでなく、「蓄熱」の効果もあるからです。

 

夏期は逆で、早朝や夜間の涼しい空気を取り込み、日中は閉め切るなどの対処をしたほうが現実的といえます。

 

給湯設備のエコキュートには水(お湯)が貯水され、生活用水として利用したという声が多かったのも新たな発見でした。

370リットルのタンクですと家族4人が3~4日は生活用水として使用できる量です。

 

災害時に使える水が自宅にあったことは、大きな支えだったでしょう。

 

全てのご家庭でカセットコンロを備えており、調理に不自由はなかったことも幸いでした。

わずか3000円程度で済むのです。

 

 

「だから、オール電化住宅がベスト」 と考えるのも早計です。

 

断熱・気密などの性能を高めることが前提であり、性能が低いままでは、オール電化住宅も灯油やガスを熱源とした住宅でも、エネルギー、熱、全てが垂れ流しです。暑いときは暑く、寒いときは寒いままなのです。

 

災害で停電になると、すぐに近場のオール電化住宅を探し出し「うち、オール電化なので困っているんです」というコメントをとりたがるマスコミの姿勢も、問題といえます。オール電化も、そうでない家も、みんな同じように困っているのです。

 

情報は簡単に操作できることを忘れてはなりません。

流通する情報を、いったん疑ってみる。

正確な情報を選択するには、常に、自分の思考と照合すること。 

ときには、直感で判断することも大切です。

 

 



 

In summary
大きな災害があるといまも時折、オール電化だから生活全てがストップして不便――という内容の報道が少なくありません。
電気が止まると、オール電化でなくても、エアコンもガス給湯器も灯油ファンヒーターも電話も使えないのです。
生命を守る住宅の基本は設備ではなく、躯体の耐震性能、断熱性能などの確保です。電気や化石燃料を問わず、一歩ずつでも、エネルギーに頼らない暮らしに転換することは、Co2の削減にも貢献します。
 
1.IHクッキングヒーターが使えなくなったときために、カセットコンロを準備しておく。ボンベの予備も数本。3000円以内で済みます。
 
2.固定電話やFAXも使えません。スマホの充電はまめにしておきます。モバイルバッテリー(予備)も家族の人数分準備しておくと便利。クルマのシガーソケットで使用できるケーブルも備えておきます。クルマは避難所にもなるため、ガソリンはタンク2分の1を切ったら給油する習慣を。
 
3.昔ながらの灯油ストーブを1台準備しておきます。冬期は、ポリ缶1つくらいの灯油も備えておきます。合計1万円未満で揃えられます。
 
オール電化際に他の熱源の住宅と比較して不便なところは、こんな程度です。上記の三つ合わせても1万円ちょっとの出費で済みます。
 
わが家ではこのほか、長期間保存できる飲料水60ℓ、トイレや洗面などに使用する水を常時100ℓ準備しています。行政はすぐに助けてはくれません。