Where we belong.=【家を知る・家に住む・この家で生きる】

そして、私たちの「居場所」について。

日々の暮らしに【締切】と【制限】を設けることで得られるもの。

 

 

 

Photos by Sweet Potato..

 

もう少し時間があったら。あと1万円給料が増えたら。あと3センチ背が高かったら。あと100年健康で生きられたら。もう少しお金持ちの彼だったら。しかし、その「もう少し」がなかなか得られないのが私たちの人生でもあります。そればかりか、毎日が締切や制限だらけ。諦めて、落ち込むことしかできないのでしょうか。家づくりや日常生活も同じ。少ない予算、狭い面積、少ない家具やモノだけでは、なかなか満足できないのです。でも、ほんの少し発想を換えると、明るい明日が待っているかもしれません。

 

 

 

 

 

人生は「dead line」の連続

どんな仕事にも締切があります。

日本は世界有数の長寿国となりましたが、

どなたの人生にも締切があります。

 

締切は制限でもあります。

 

終わり、結び、仕舞い、おしまい、

約束、期限 、縛り――など類語もいくつかありますが、

どの言葉も、

ちょっと緊張感を宿しているように見えます。

 

締切は、英語で「dead line」。

文字通り「dead」は「死」を意味し、

「line」は「線」で「死線」。

 

約束事に「死」という言葉が充てられていますが、

「そんなに厳しいニュアンスでもないけど」

というネイティブもいます。

それでも「締切がある」ことは

「I have a deadline」なのです。

 

仕事でも、

人間関係でも「締切」はつきもの。

 

友人や恋人との時間にも、

約束の時間に到着しなければならない縛りがあり、

お別れの時間もあります。

 

この締切をどう捉えるかは、

その人の心のバロメーター。

締切があるから集中できるという人もいますし、

平気で約束を守らない人もいます。

 

病気になったり、高齢になると、

自分はあと何年生きられるのだろうと、

残された時間のことを考えることもあるでしょう。

どんなケースでも、

やはり緊張感が伴う言葉であることは確かなようです。

 

 

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1週間の条件が1カ月だったら

ボルネオ(マレーシア)のある

福祉施設を取材した際、

話を聞いた担当者から

こんなふうに言われたことがあります。

 

「たった1週間で、我々の国の何が分かるというか」

 

どんな現場でも

自らに問いかけなければならない大事なテーマです。

ドキリとしました。

 

私たちは常に、1週間どころか、

小一時間の取材で、

世の中のことが分かったようなことを

伝えてしまいそうなリスクを抱えています。

だからこそ、誠実に、

謙虚な気持ちを忘れてはならないと

自分に言い聞かせながら、仕事をしてきたつもりでした。

 

こう答えるしかできませんでした。

「これが1週間ではなく、

1年、いや1カ月だったら、

むしろ何も書けなくなってしまいます」

いまでも同じ質問をされたら、同じように答えることと思います。

 

 

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諦めるというプラスの選択

締切は制限、制約でもあります。

限られた時間、条件の中で、

一定の仕事をすることは、

あるところで諦めも要求されます。

 

何を諦めるのか。

「それ以上」を諦めるのです。

 

ものごとを知ろうとすれば、

1時間より24時間、1日より1週間、

1週間より1カ月あれば、

比例して量を得ることができます。

 

しかし、仕事には時間のほかに

予算、健康、環境など、さまざまな制約があります。

それらの中で成し遂げるためには、

一生を費やしても足りないことばかりなのです。

 

100メートル競走では

100メートル、マラソンでは42.195キロという

際限の中で、走者は自己のベストを尽くし、他者と競います。

100メートル走者が、

あと10メートル短かったら、

あと3メートル長かったらという要求を

出すことはできません。

 

諦めることは、

マイナスなことばかりではないはず。

与えられた締切、制限の中で、

最高の自分を発揮できる、プラスの作用もあります。

 

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自らに制限を課す仕事の現場

仕事に同行するスタッフたちに、

こんな「制限」を課すことがあります。

「この現場は、60分で切りあげましょう」

換言すれば、

「60分で最高の仕事をしてみせよう」ということです。

 

レコーダーを回し、だらだらと2時間、3時間、

話を聞くより、60分を自分の締切と定め、

背水の陣で本質に迫ることで、

思いもよらぬ話を聞けることは少なくありません。

スタッフ全員の動きにキレが出て、

目つきもおのずと真剣になり、

誠実な姿勢は相手の心を開きます。 

 

時間を増やせば、

確かに多くの情報を得ることができます。

が、その先には800字にまとめるのか、

15万字を書くのかといった次の制限が待ち受けています。

15万字もまた制限。

その15万字をいつまで仕上げるかの締切。

写真ですと、

仮に見開き2ページに何点で勝負をかけるか、

といった制限が常に課せられるのです。

 

私たちは、生きている限り、

締切や制限から逃れることはできそうにありません。

 

 

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日本の家の「個性」の考え方

家づくり、日々の暮らしにも同じことがいえます。

 

家を建てる、暮らしを営むということは、

地域の気候風土、伝統や文化、地形、

お隣さんの家族構成やお人柄への気遣いまで、

あらゆる制限の中でかたちをつくる、

日常を生きるということです。

 

数百年も続く田園風景の中に、

ピンク色の奇抜な形状の洋風住宅、

プロバンス風の住宅が1つできるだけで、

地域の景観は破壊されます。

(誤解のないように申し上げれば、

問題の本質は本物ではなく、

日本人の得意な「〇〇風」にあります)

 

残念ながら、日本の住宅の「個性」とは、

このレベルにとどまっているかのように思えてきます。

 

家には、常に厳しい制限が課せられます。

地域の中で、末長く社会資産であり続けること。

平穏で健やかな家族の日常を支え続けること。

 

毎日3食、

高級料理を食べていては飽きてしまうように、

斬新な「個性」を主張するデザインなど、

1週間もすれば飽きてしまうのです。

 

日常的に継続できる機能と

さりげない美しさを語るとき、日本には「用と美」

という言葉があります。

 

限られた予算と面積で実現するという制限、

いつまでに完成するという締切。

それらの中で最大限の知恵と

ノウハウを搾り出して初めて生まれる

「用と美」から、価値が生まれます。

 

 

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思 い切って諦めることの未来

どんな人生にも締切があります。

私たちは、その締切を

1分でも伸ばそうと、必死にもがいています。

健康になれるなら死んでもいいという人は、

どれほどいるかわかりません。

 

生活はどうでしょう。

1円でも損をしなくない。

1つでも多くのモノがほしい。

あと少し、痩せていたら。

あと少し背が高かったら。

あと少し、もう少しだけ。

 

自分だけの「もっと」で

頭がいっぱいの人が増えると、

世の中はさらに生きづらくなります。

私たちは、自分で自分の締切を設定しない限り、

ほんとうは何一つできない弱さを抱えたままなのです。

 

自分で小さな締切をつくると、

その数だけ諦めることも増えていきます。

しかし、何もせずに諦めるのと、

精一杯やって、諦めるのとは違います。

 

 

諦めることに潜む「真実」の意味

諦めるの「諦」は、

サンスクリット語のsatya(サトヤ)の訳語。

「真実」「真理」を意味する言葉とされます。

 

単に「あきらめる」だけだと悔いが残ります。

が、思い切ることで、

少しだけ納得できる「諦め」に近づけます。

そこで、これまで見えなかったことが

見えてくることもあります。

 

生きることは「dead line」の連続。

その都度、締切、制限に

見合った思い切りで、諦め、納得していくほかありません。

 

思い切って、諦める。

諦めるのが難しかったら、ほんの少し手放してみる。

 

なかなか難しいことですが、

こうした弱さを、自分にも、相手にも見出し、

認め合い、うなずき合うところに、

あたたかさのようなものが生まれてくるように思います。

 

 

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※最後まで読んでいただき、ありがとうございました。コメントをいただいた方にもお礼を申し上げます。

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