Where we belong.=【家を知る・家に住む・この家で生きる】

そして、私たちの「居場所」について。

線から見えてくる家のデザイン。

 

 

 

京都・三十三間堂。水平ラインの圧倒的な抑制美。



日本の直線美・西洋の曲線美

地方を旅すると、古い町並や家の造りを丁寧に見学します。

老舗の駄菓子屋、酒屋や町家、古い民家を利用したカフェなどがあると、建物のなかに入って、ぐるりとなかを見回します。

 

あちこち、そっとふれてもみます。

寺社建築も同じように、構造、架構を拝見し、設計図もなしで造り上げた往時の職人たちに敬意を表するのです。

 

お客さんを迎える土間、おばあちゃんやお母さんが料理をする台所やかまど、黒光りする板間や柱や梁、組子の建具、畳の美しさ。

お寺や神社には、何千何万で済まない人々の祈りと願いが集積されています。

私たちがとうに忘れてしまった建築美のみならず、時代を越えて受け継がれた思いを感じる豊穣の時間です。

 

そんな家に住んだことはないにもかかわらず、お寺など、生活する場でもないのに、なぜ、そこにいると安堵するのか。

その感覚を、尊重しなくてはなりません。

 

 

その都度、どうにかして、それらを現代の建築に応用できないものかと考えてしまいます。

そっくりそのまま、再現してもらいたいくらいですが、それをしてくれるビルダーさんはなかなかいません(健康を害するくらいの寒さや暑さはいやです)。

 

失われたものの復権に取り組むこともまた、建築の務め。私たちの役割でもあります。

 

西洋の建築ではアールなどの曲線を多用しますが、日本では水平、垂直などの直線美が外観にも内部でも使われます。

 

www.ienotomo.com

 

わかりやすい例でいうと、神社の鳥居は水平に2本、垂直に2本の直線を使っています。

あんなに単純なかたちに、私たちは俗世と異界の結界を感じるのです。

その感性もまた、日本人ならではのものといえましょう。

 

日本の伝統建築が低い高さの水平・垂直ラインを大事にしていることで、私たちは無意識にどれだけの安定感、安心感を得てきたかわかりません。

 

京都・源光庵の丸い「悟りの窓」や高台寺にある釣り鐘型の花頭窓など、曲線で描かれる窓もありますが、一般住宅では少数です。

 

アーチ加工などが容易な石材に比べて、木材は直線的な加工をしやすいこともあるのでしょうが、それを縦、横に組み合わせる手法が定着したことは当然の流れといえます。  

 

 

 

f:id:akadk01:20190624180657j:plain

古い町家は大半が直線で構成されているのがわかる(京都)。

 

 

 

一方、欧州の建築はレンガ造や石造のものが多く、壁を主体とする面的な構成をとっています。

 

開口部の多くは湾曲するアーチでせり上げられ、天井やファサード、柱の上部などをゆるやかな曲線=「アール」にデザインし、女性の身体フォルムを連想させるようなやさしさを醸しています。

そこでも、私たちは同様に、安心感を得ることができます。

 

アールとは、半径(Radius)または、円やアーチ状を意味するラウンド(Round)の頭文字からきているといわれます。

 

日本ではあまり見かけることはありませんが、上部がアールになった玄関ドアや窓はそのまま建物の表情をつくり、その表情が集積されて町ができます。

 

西洋の町も日本の町も「線」の個性で、町の個性をつくっているのです。

 

 

空間の境界をアールにデザインする。区切りをやわらかくし、連続性したやさしさが演出される。

 

直線だけの障子や組子のデザイン

日本の家の柱や梁、障子や建具の格子などは、ほとんど直線で構成されます。

昔はガラスがなかったため、障子がその役割を果たしていました。

いまも障子は直線の格子でできています。

外を見ることはできませんが、光や影は透かして見せるという粋なはからいです。

 

障子は縦横の線を組子として使い、さまざまなデザインがあります。

横繁障子は横の組子が多く入った障子で関東で人気があり、縦の組子が多く入った縦繁障子は関西で好まれます。

 

障子紙を貼らず組子だけにして、ほどよく視線をさえぎりながら通風と光を操る建具は、モダンな建築にもぴったりの建具。

 

 

 

結界もつくってくれます。

 

紙を通してやわらかい光を愉しめることはもちろん、白いスクリーンに陰が揺らぐことまで感じ取る日本人の美学は、もう少し見直されてもいいかもしれません。

人と人との間で、ストレートにものを言い合うのではなく、互いを察する文化が、建築にも表われているのです。

 

一般に、格子の材料として使用されているものは、スギやスプルースなどが多く、格式の高い空間ではヒノキが使われていることもあります。

 

最近は、格子も木材だけでなく、さまざまな素材があり、障子紙も、破れない素材、断熱性の高い素材など、いろんな種類があるようです。

でも、あの脆い紙にこそ、美学を感じるのです。

 

 

障子の面白さは、組子の形状によって印象が変化して見えることでもあります。組子の柄を美しくデザインし、空間全体のアクセントとして活用しても素敵です。

 

組子によってさまざまなデザインがあり、荒組障子、横繁障子、縦繁障子、桝組障子、吹寄障子、雪見障子など、種類を頭のなかに入れておくだけで、空間のデザインの幅は格段にひろがっていくことでしょう。

 

 

 

 

※組子

溝・穴・ホゾ加工を施し、釘を使わず1本1本組み付けする技術で、飛鳥時代からの伝統技術でもある。主に障子や欄間で使われる。

 

 

和と洋の建築美を取り入れる

日本の建築は自然と一体となって…という表現をよく目にします。

外と内とを曖昧に区切り、暑さ寒さも強力に遮断するのではなく、自然の営みを生かしつつ、といったところでは、確かにそうかもしれません。

 

しかし、自然界に存在しない直線をあえて多用し、そこに美しさを見出す側面で考えると、日本人は案外、外と内とを明確に区分けしてきたともいえます。

 

内では縦横の線をあえて用い、内のなかに動的な非軸を創造しながら気持ちを引き締める。

日本人はそうして、日常のなかにハレとケの抑揚を創造してきたのではないでしょうか。

 

日本建築は縦と横の直線で構成される。

 

現代の家では、和洋の境界などはすでになく、線でいえば、曲線も直線も混在した空間に、私たちは住んでいます。

それはあたかも、洋服を来て神社仏閣で神事を行い、靴を脱いだ床でソファに座り、床にも座る暮らしをしている曖昧さと似ています。

 

合理性や機能性では西洋のそれに学ぶことは少なくありませんが、くつろぎや美意識の側面では、日本建築が大切に育んできた縦横の直線からそれを得ることはいまだ多いはず。

格子や障子、畳、床の間など直っすぐな線から得られる安堵感は、私たちがこれからも受け継ぐべきDNAです。

 

反対に、アールの曲線美に、やさしさを感じる感性も私たちは持ち合わせています。

ポスト・モダンなど難しい言葉を使うことより、もっと等身大の和と洋、直線・曲線混在のデザイン、空間を考えられないでしょうか。

 

洋のなかに和を応用し、和のなかで洋を試みる。

いつの時代も、デザインのキーワードは「線」といってもよいでしょう。

 

家づくりの際、町歩きのときにも、「線」を意識して空間、環境を眺めてみると、また違った世界が見えてきます。

 

いいデザインをするには、デザインの素材を多く持つことです。

 

 

 

 

 

 

www.ienotomo.com

 

www.ienotomo.com

 

www.ienotomo.com

  

 

まとめ

1.西洋の建築ではアールなどの曲線を多用するが、日本では水平、垂直などの直線が多く使われる。

 

2.神社の鳥居は水平に2本、垂直に2本の直線。こういう単純なかたちにも、日本人は俗世と異界の結界を表現し感じてきた。

 

3.欧州の建築物はゆるやかな曲線=「アール」をデザインに取り入れることが多い。アールは空間の区切りをやわらかくし、連続性したやさしさを演出する

 

4.日本の家の柱や梁、障子や建具の格子などは、ほとんど直線。障子は外を見ることはできないが、光や影は透かして見せる。縦横の線を組子として使っていることから、欄間などと同様、さまざまなデザインが楽しめる。

 

5.和洋が混在した現代の暮らしでは、家にも曲線・直線の両方があってよい。形式にとらわれず、等身大の生活感覚で「線」からデザインを考えていきたい。「線」のバリエーションを豊富に持つことで、デザインの可能が飛躍的にひろがる。

 

にほんブログ村 住まいブログへ
にほんブログ村

 

にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村