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そして、私たちの「居場所」について。

【開口部(サッシ+ガラス)】=窓の性能を高めることで、劇的に向上する快適さ。

 

 

 

 

 

 

 

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窓は通風や眺望の役目もありますが、外からの熱を入れない、室内の熱を逃がさないなど、断熱も大切な役割です。窓から逃げる熱は冬期で屋内の約48%。言い換えると、窓の性能を上げるだけで、劇的な暖房エネルギー削減ができるといえそうです。

 

Contents. 

 


開ける窓と閉じるための窓

日本における窓は「目戸」あるいは「間戸」が起源。

壁はもともと非耐力壁でしたので、大きくとっても問題にはされず、柱と柱の間が全部開口部になっているような建物は、いまも全国各地で見ることができます。

 

代表的な「目戸」は縁側です。

 

これは庭に向けた大開口部ともいえ、通風、出入り、眺望など生活機能まで有した日本ならではのものといえます。

 

西洋建築で「窓」が小さいのは、柱ではなく、壁を構造体としているから。

通風、出入りの機能より、外の世界との遮断、採光、換気、眺望などが重視され、同時に高いレベルのデザインや種類のバリエーションが求められました。

 

しかし、外界との遮断と採光、眺望とは相反するものです。

特に遮断に関しては、透過を求めつつ、壁同様の機能や性能が要求されます。

 

景色は見たいけど、強い日差しはいらない。

光は得たいが、眩しいのはだめ。

風を遮りたいが、気持ちのいい風だけ感じたい。

夏は涼しく、冬は暖かく、結露はいや!

――など、窓は相反するテーマを多く課せられ、なかなか大変なのです。

 

 

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日本の伝統建築は柱と柱の間が、全部、開口部の感覚。

 

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欧米の窓は閉じることを前提にし、断熱性能が高く表情もゆたか。デザイン性の高さが街の美しさを決める。

 

 

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ドイツで多く採用されるドレーキップ窓(内開き・内倒し窓)。1つの枠に2つの開閉機構を備え、気密性、防犯性にすぐれ、換気にも有利。出典:エクセルシャノン

 

 

 

 

 

 

 

窓に税金が課せられた時代

海外では、窓の数によって税金が課せられた時代がありました。

イギリスにあった「窓税」は、1696年から1851年まで実に155年も続いたのです。

 

当時、ガラスは高価なもの。

となると、窓にガラスを使うのはお金持ちと決めつけ、国は彼らから税金をとろうとしたのです。

 

しかし、税金をとられるほうもアホではありません。

だったら、窓を隠してしまおうとする人が増え、その結果、暗く換気もできない部屋が多くなり、体調を崩してしまう人がたくさん出たといいます。

 

オランダやバルト3国にも同様の制度がありました。

人々は窓をふさぐだけではなく、間口が狭く、奥行きの長い建物を並べて建てるようになりました。

オランダの運河沿いに隙間なく建ち並ぶ建物群は、そうした税制の名残りともいえます。

 

江戸時代の日本にも、間口税や棟別銭という制度がありました。

その名の通り、間口の広さに応じてかけた税金です。

 

やはり、税金を課せられるほうは知恵を絞り、負担を減らすために間口を狭くする建築を考えました。

 

そうして間口が狭く、奥行きが細長い町家が生まれ、京都では都市景観の特徴にもなっているのです。

 

 

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木製サッシ+3層ガラス。性能の高さが温熱環境と省エネ性能を決める。

 

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住宅の断熱で重要なのが、開口部の断熱性能を高めること。冬の暖房時に、屋外に逃げ出す熱の約5割が窓などの開口部からで、夏の冷房時に、室外から侵入する熱の約7割は窓などの開口部から。出典:資源エネルギー庁

 

 

 

 

 

 

 

冬期は窓から熱が逃げ放題

躯体の断熱・気密性能の向上ともに窓の性能、デザインに注目が集まってきました。

日本でも「目戸」としての窓ではなく、性能的に外界と遮断する目的の窓が採用されるようになってきたのです。

 

「開ける」窓から「閉じる」窓への変化は日本の建築史上では革命的なことといえます。

 

冬期においては窓から5割もの熱が流出し、夏期は7割の熱が窓から流入します。

 

グラスウール100ミリの断熱の壁と比較すると、単板ガラスでは20倍、複層(ペア)ガラスで10倍もの熱が逃げてしまいます(室温20℃、外気温マイナス10℃時の計算値)。

 

近年、急速に普及してきた3層ガラスでも、100ミリの断熱材を入れた壁と比べると6倍の熱が逃げます。

 

逆にいいますと、断熱材の入っていない板切れ1枚程度の薄い壁は、3層ガラスに負けてしまうことになるのです。

 

窓の断熱性能(省エネ建材等級)は国の「窓等の断熱性能に係る情報提供に関するガイドライン」により表示され、熱貫流率によって4つの☆マークで区分されます。

これは製品のサッシに☆がついていますので、すぐに見分けることができるはずです。

 

 

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窓の内外の温度差が1℃あったときに、単位時間あたりに窓の面積1m2を通過する熱量をワットで表したものが「熱貫流率(U値)」。数値が小さいほど断熱性に優れている。 窓の性能は★の数で示される。★4つは熱貫流率が2.33以下のもの。写真上はわが家のドレーキップでトリプルガラス。

 

 

 

 

 

 

 

窓の断熱性能を表わす数値

窓の断熱性能は熱貫流率(U値)で示されます。

「内外の温度差が1℃のとき、単位時間あたりに窓面積1㎡を通過する熱量を示す数値」で数値が小さいほど断熱性が高いことになり、単位は、「W/1㎡・K)」。

 

熱貫流率が2.33以下が☆4つ(4スター)、2.33を超え3.49以下のものが3スター、3.49を超え4.65以下のものが2スター、4.65を超えるものが1スターとなり、予算の許す限り、最高等級の窓を選択します。

 

結局、光熱費削減というメリットで回収の可能性があり、回収までの期間も厳しい寒さや暑さに悩まなくていいことを考慮すると、費用対効果は十分すぎといえます。

 

 

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断熱性能の高い窓であれば、吹き抜け・北側に設置しても寒さの問題はなく、むしろ安定した採光が確保される。

 

 

 

 

 

 

 

不健康なコールドドラフト

ガラスやサッシ面からの熱損失が大きいと、コールドドラフト現象が発生します。

ガラス面にふれている空気は室内の空気に比べて密度が大きく、その重力差で窓面をなめるようにして降りてきて、冷えた空気が床面を這いながら室内に流れ込むのです。

 

隙間風とは異なり、室内に氷を置いている感覚。

室温がいくら高くても、コールドドラフトがある限り寒さを感じ、その対策として温水パネルやラジエーターを窓際に設置することになります。

 

表面温度の高い床暖房は、このコールドドラフトをごまかしてしまいますので、快適な錯覚を得ますが、日本人のように、床に座る時間の長い民族には、長時間、皮膚が高温に接触することになりますので、おすすめできません。

もっとも、外皮平均熱貫流率=UA値を高め、低温による床暖房はその限りではないことを付記しておきます。

 

建物全体の断熱・気密性能を向上させるしかないのですが、その際には、窓の性能がかなめとなり、窓面積、断熱性能も考慮しなくてはならないのです。

 

窓枠つまりサッシの部分も、アルミ、樹脂、木製など、さまざまな種類があり、枠の素材の熱損も考慮します。

 

欧米、中国、韓国ではすでにアルミサッシよりも樹脂サッシのシェアが多くを占めています。

アルミサッシを住宅用に使うことを禁じている国もあるほどです。

 

 

リフォーム時に、もっとも費用や工事日数がかからないのが窓の断熱。

内窓を設置して窓を二重にすることがもっとも簡単ですが、ガラスだけ断熱性の高いものと交換することもできます。

 

可能であれば、樹脂サッシ+3層ガラスの製品として窓をそっくりそのまま交換する選択肢もあります。

 

特殊金属膜(酸化亜鉛と銀)をコーティングして断熱性を高めたLow-Eガラス(遮熱タイプと)、複層ガラスの間にアルゴンガスを充填してさらに断熱性を高めた製品もあり、これらの製品は断熱性のみならず、遮熱性や結露防止効果も高くなります。

 

 

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窓の断熱性能は、ガラスとサッシの組み合わせで決まる。近年は3層ガラスも普及。リフォームなどの際、既存の窓の内側に新しく内窓を設置して二重窓にしても、複層ガラス窓と同程度の断熱性能が確保できる。出典・資源エネルギー庁

 

 

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世界の開口部はすでに樹脂サッシがスタンダードだが、 日本においての普及は7%(H24.3)。

出典 樹脂サッシ工業会 

日本:社団法人日本サッシ協会 住宅用建材使用状況調査 H24.3 アメリカ:2010/2011 U.S.National Statistical Review and Forecast EU:Interconnection Consulting Group, "Windows in Europe 2005" 韓国:日本板硝子(株)調査2011年データ

 

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引き違いはほとんど見かけない欧州の住まい。ドアタイプやフィックス、ドレーキップなど高断熱・高気密の窓が主流。by CASA SCHWANCK 

 

 

 

 

 

 

 

 

窓に求める機能を絞り込む

しかし、日本人の私たちには、いまだ「目戸」のDNAが脈々と流れています。

掃き出し窓がなくならないのはそのためでしょうし、性能重視のために窓を小さめにするのにも、抵抗があるのです。

 

窓メーカーやビルダーの方々が苦労するところでもありますが、眺望も窓の立派な性能と考えれば、大好きな庭、お気に入りの景色を眺めるために窓をなくし、小さくしてしまうとのは、ちょっと違う気もします。

 

わがままをいって、性能もほしい、眺望も大事、デザインもカッコいいものをといけばおのずと窓にかかる費用もアップします。

もちろん、防犯性能も要チェックです。

 

眺望は、性能にも費用にも換算できるものではありません。

お気に入りの景色があれば、そこは性能を一歩譲って大きめの窓とするというのもそれはそれで、家づくりに対する立派な意志だと思います。

 

しかし、前述したように、結露だらけ、エネルギーを垂れ流しにしてしまう性能では「目戸」の時代と大差ありません。

 

かつての町家や農家、寺社建築のように、機械設備を使わず、自然エネルギーだけで暑さや寒さの対策をした時代とは異なり、いまでは町家や農家でもエアコン、ストーブが使う時代です。

 

エネルギーを使用する以上は、それらを抑制しながら快適さを享受するのが私たちの義務でもあるのです。

 

 

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断熱性の高い窓は設置場所を選ばない。種類の異なる窓を連ねるデザインも。by CASA SCHWANCK 

 

 

 

 

 

 

住まいの顔を決めるのも窓

窓は外観イメージを決定づけ、屋内からはインテリアを形成するデザインアイテムでもあります。

欧米の家々の表情が豊かに見えるのは、窓のバリエーションの豊富さによるものといっても言い過ぎではありません。

 

日本ではいまだ引き違い、掃き出しなどの窓が主流で、画一的なデザインにしかなりせんが、欧米では古くからアールの窓、上げ下げ窓、ひし形、、丸型、スクエア、FIX、ドレーキップなど多くのバリエーションがあります。

 

なおかつそれらの組み合わせを楽しむかのように建築物がデザインされ、美しい都市景観をつくりあげてきたのです。

 

日本のメーカーでも、窓の多機能化、デザイン化急速に進んでいます。

あとは設計者と施主のセンスが問われるのみです。

 

 

 

 

まとめ

1.日本とヨーロッパの窓への考え方、文化は根本から異なる。ただし、「開く」建築から「閉じる」建築に移行してきた現在の日本の住宅では、「閉じる」=断熱性・気密性を重視した窓の選択が重要となる。

 

2. 窓の性能は熱貫流率(U値)で示される。数値が小さいほど断熱性が高いことになり、単位は、「W/1㎡・K)」。Low-E、アルゴンガス充填仕様など性能向上には投資を惜しまない。結果として、光熱費が安くなり、健康性能が上がることでメリットの方が多い。

 

3.窓は「☆3つ=【スリースター】」以上の樹脂サッシを選択する(熱貫流率2.33を超え3.49以下)。このレベルであれば、日射遮へいの手法にもよるものの、夏期の暑さ、厳寒期のコールドドラフト対策にも高い効果を発揮。

 

4.ガラスやサッシ面からの熱損失が大きいと、コールドドラフト現象が発生し、冷えた空気が床面を這いながら室内に流れ込む。隙間風とは異なり、室内に氷を置いている感覚。表面温度の高い床暖房は、このコールドドラフトをごまかしてしまうために設置されることが多い。長時間、皮膚が高温に接触することは不健康そのもの。もっとも、外皮平均熱貫流率=UA値を高め、低温による床暖房はその限りではない。

 

5.窓のバリエーションは、いまだ海外メーカーに及ばないのが実情。歴史と文化の重層が異なるので仕方がないが、引き違いにこだわらず、あらゆる種類の窓について事前に学んでおくことで、外観の表情、居住性、インテリア性、温熱環境まで大きな違いが出てくる。