いよいよ本格的な夏。エアコンをフル稼働させる前に、どこの家にでもある古い扇風機を使って、光熱費削減にトライしてみませんか。一日中つけていても、電気代は10円ちょっと。設置する位置や風の角度で、そのまま使っても、エアコンとの併用でも、お部屋の涼しさが変わります。
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冷暖房と給湯で6割の消費
家庭内でのエネルギー消費量は増え続け、石油ショック前の1973年から2011年までの間に、2.4倍にまで増加しています。
用途別にシェアの大きいのは、動力・照明他、給湯、暖房、厨房、冷房の順。
1965年度と比較して、2011年度では、動力・照明用のシェアが増えており、家電機器の普及や大型化、多様化によるものと見られています(資源エネルギー庁)。
東北、北海道では家庭用エネルギーの中で暖房・給湯が占めるのは7割、関東以西でも6割です。
温暖化の影響で北国にまでエアコンが普及しており、冷房のシェアも増加しています。
そうしたなかで、地味ではなく、割と派手目に売り上げが伸びているのが扇風機。
我が家でも、古い扇風機が、冷房時のみならず、冬期間の暖房時でも活躍しています。
暖房すると、暖かい空気は上の方に行き、冷たい空気は床に溜まります。
断熱・気密など高い性能を有した家では、屋内全体が輻射熱による快適な暖房感を得られますが、気流が不快にならない程度で実験をしてみても損はありません。
我が家は一昔以上前の中途半端な断熱・気密住宅ですが(2015年に断熱改修)、以前もここに書きましたように、冬期は11月から4月中旬まで、暖房器は24時間連続暖房です。
真冬でも大活躍した扇風機
自宅併設の事務所はエアコン。
ここでもスイッチを11月~3月までオフにすることはありません。
低温設定で連続暖房することで屋内に輻射熱をキープし、それでもオンオフをまめにする間欠暖房より省エネであることがわかっているからです。
さらなる省エネが可能かどうかを確かめるために、11月から3月まで、扇風機を自宅リビングで使った記録が残っています。
日中は、リビングの隅に置いた扇風機を45度の角度で天井に向けて動かします。
扇風機の風は微弱。
天井付近で溜まりがちな暖かい空気が部屋中に撹拌され、室温は3℃下げても寒さは感じません。
就寝時には暖房器の温度設定を18℃とし、扇風機もオフ。
扇風機の電気代は2時間で1円ほどですので、1日16時間連続して使用しても10円ちょっとです。
結論から先に述べますと、11月からこの3月まで、灯油の消費量は20%減となり、上下の温度差も解消されました。
温熱環境は各段にアップしたことになります。
エアコンですと、暖房時は設定温度を2℃下げれば10%、冷房時は1℃上げると約10%の省エネになります。
暖房時でも扇風機の効果はあなどれないわけです。
エアコン+扇風機で涼感を
エアコンによる冷房が主流になったいまも、扇風機の出番は少なくありません。
扇風機で温度を下げることはできませんが、涼を得ることはできます。
エアコンを使わず涼感を得るには、暖房時と同じく、扇風機を置く位置がカギとなります。
外気温が低い場合は、開け放った窓の前に扇風機を置き、室内に向けて風を流します。
部屋の対角線上の窓を双方開け放し、そこに気流ができるようにするのがポイントです。
室温よりも外の気温が高い場合は、室内から開放した窓に向かって風を向けると、部屋の温度を低く保つことができます。
暖かい空気は上に行きますので、天井付近には、暑い空気が溜まり込んでいます。
暖房時と同じ要領で、しばらく45度の角度で天井の隅を狙って扇風機で気流をつくると、室内の温度分布が次第に均一になってきます。
最初は暑い空気が撹拌されることで少し不快ですが、気流ができ、身体にあたるようになると、扇風機本来の涼を感じることができます。
エアコンと扇風機の併用は、さらなる涼感アップに効果的です。
従来、設定温度を25℃で使っていた人でも、28―30℃と高めに設定し、その誤差を扇風機で埋めるのです。
エアコンは設定温度を低くすればするほど電気量が下がりますので、10-30%の節電も十分に視野に入ってきます。
扇風機を置く場所はエアコンの下、角度はやはり上方45度。
冷たい空気は部屋の下に溜まりますので、その空気を扇風機で撹拌し、循環させます。
扇風機がなく、これから購入する人には、サーキュレーターも選択肢に入るでしょう。
サーキュレーターは、室内の空気を攪拌するのが仕事ですが、気流は強めで直線的なため、遠くまで届くものの風の微調整ができません(できるものもあります)。
音も大きいので、個人的には、安価な扇風機で十分ではないかと思います。
最近、DCモーター搭載機が人気ですが、従来のACモーターに比べ価格は10倍前後もします。
機能が充実し、より省エネであることは理解できます。
しかし、扇風機の電気代など、旧機種でもたかがしれています。
ここでのテーマはあくまで、「いま、もしご家庭に扇風機があれば」ということが前提です。
購入するとしても、ふつうの製品で十分、という立場であることを付記しておきます。
光熱費30%減の壁を超える
あの3.11以降、我が家では約30%の光熱費減に成功しました。
あえて「約」とつけたのは、29%台で留まり、30%の壁をいまも突破できないでいるからです。
ガス給湯器、暖房便座、テレビなどはこまめにオンオフをし、照明は蛍光灯を含め、ほとんどをLEDに交換しました。
照明のスイッチのオンオフを頻繁に繰り返しても省エネなので、必要なときだけつけることができます。
これまでも必要のないときには消灯していますたが、電球の寿命が短くなります。
その点、LEDの寿命の長さは数十倍です。
テレビの時間を少なくし、ラジオを聴くことが多くなったことも、省エネに貢献しました。
ラジオにはほかにも思わぬ効果があったのです。
スイッチをつけると、室内の空気がさっと鎮まり、家族が話す声もどことなく静かになります。
ラジオで話す人の声は、テレビよりもずっと抑えられていることに気づきます。
特に、週末や夕食後のラジオのある時間は、とてもゆたかな時間になります。
ちなみに、ラジオ(0.1~10W)を1年間つけっぱなしにしていても、電気代は25円前後。
テレビ(80W 40型)の1日分(10時間)とほぼ同じです。
3台ある仕事場(自宅併設)のパソコンは電源オプションを変更し、5分席を離れると、モニターも本体もスリープ状態になるように設定しました。
冷暖房はエアコンですが、前述したように、連続運転の方が省エネであることが実証済です。
寒いときには一枚余計にカーディガンを羽織るようにする、暑いときにはしばし扇風機を身体にあてる、強にして壁に気流を回すようにするなど、小さなことに気をつけるようにしました。
それらの工夫の結果、自宅・事務所ともに光熱費(エネルギーではなく金額換算)は前年対比で29%減らすことができたのです。
それでも省エネをめざそう
何も血のにじむような努力などではなく、あっ、これってもったいないかも…と気をつけた程度のことばかり。
当時はまだ息子がいましたので、3人暮らし。
「省エネがいやにならない」
ことを前提にしたことでしたので、しゃかりきになれば、あと数パーセントの光熱費削減も無理ではなかったと推測されます。
いずれにせよ、これまでいかにエネルギー消費や光熱費に無関心で、配慮が足らなかったことかと、家族みんなで反省する機会になったのです。
冷暖房も給湯も、設備の進化は目を見張るものがあります。
エアコン、エコキュートなどは、日本が誇るヒートポンプ技術が応用された世界に誇る省エネ機器です。
1の電気に対して3、4ものエネルギーを取り出すことが可能なシステムですが、この性能については「COP」「APF」などが指標となり、購入時に簡単に確認できます。この内容についても、機会を改め、ここで述べる予定です。
しかし、ここで何度も繰り返しているように、断熱・気密などの住宅性能をおざなりしたまま設備の重装備化を図っても、エネルギーは減るものの、居住性は変わりません。
新築、リフォームなどの際の予算配分は、あくまで住宅性能が先であり、設備は黒子なのです。
最先端の省エネとは設備に頼ることなく、人間が自分の意思で、できる限りの節約をすることが大切であることがわかりました。
省エネというよりは、人間としても最低の嗜みといえるかもしれません。
1.家庭用エネルギー消費量は増加の一途。エアコンの普及により、冷房のシェアも増加している。
2.冬期間の暖房時にも扇風機を活用する。日中は、リビングの隅に置いた扇風機を45度の角度で天井に向けて動かす。扇風機の風は微弱とする。
3.扇風機の電気代は1日16時間連続して使用しても10円前後の超省エネ機器。
4.外気温が低い場合は、開け放った窓の前に扇風機を置き、室内に向けて風を送る。この際、部屋の対角線上の窓を双方開け放しておく。
5.室温よりも外の気温が高い場合は、室内から開放した窓に向かって風を向ける。
6.天井付近に暑い空気が溜まり込んいるので、しばらく天井に向かって45度の角度で扇風機で気流をつくる。
7.サーキュレーターは、気流は強めで直線的。音も大きい。用途や好みで選びたい。個人的には安価な扇風機がおすすめ。
8.ラジオ(0.1~10W)を1年間つけっぱなしにしても、電気代は25円前後。テレビ(80W 40型)の1日分(10時間)とほぼ同じ。
9.「省エネがいやにならない」ことを前提にした取り組みでも、我が家では29%の省エネを実現。我が家でできたのですから、どのご家庭でも、できます。
10.新築、リフォームなどの際の予算配分は、あくまで住宅性能が先であり、設備は黒子。