Where we belong.=【家を知る・家に住む・この家で生きる】

そして、私たちの「居場所」について。

【冷房・暖房】=高額な設備機器より、まずは建物の断熱性能を確保する。

 

 

 

 

 

 

by Bliss My HouseIdea

日本の家庭内で消費されるエネルギー消費は上昇の一途をたどり、上昇率は国際的にも突出しています。冷暖房や給湯に関わるエネルギーは、さほど増加しているわけではないのに、家電製品や照明などのエネルギーが一向に減少する気配を見せていないのです。家の中のどこでも快適な温度に保たれた欧米と異なり、日本の家はいまも夏は熱中症になるような暑さ、冬はいつヒートショックになってもおかしくない寒い不健康な家ばかり。私たちの日本人の家と暮らしをいま一度、見つめ直します。

 

Contents.

 

 

暑さ・寒さと健康との関わり

日本の世帯当たりの用途別エネルギー消費量は、暖房と給湯で約70%割を占めており、冷房は1-2%程度でしかありません。

圧倒的に暖房用が多いのです。

それでも欧州諸国の暖房エネルギー消費量と比べると、日本は5分の1くらい。

冬期の平均気温がほぼ同じ東京とローマを比較しても、ローマは東京の4倍近くも消費しています。

エコ、エコっていっているあちらの国に比べたら、日本だって、すごいエコ国家じゃないかと胸を張りたくなります。

しかし、欧州の国々の大半が、真冬でも最小のエネルギーで屋内の全ての場所を20℃前後に保つよう法制化し国民の健康を守っているのと、暑さや寒さを我慢して大量の家電製品でエネルギーを使用し続けている日本とでは、基本的な家の価値観、人権の考え方そのものが異なるのです。

 

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by Bliss My HouseIdea

 

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我慢を強いる家は家ではない

だったら、省エネルギー機器や自然エネルギーを使うようにして、少々の暑さや寒さ、不快な結露だって我慢をして暮せばよいのではないか。

そんなふうに考える人も少なくないはずです。

でも、すでに4人に1人が高齢者であり、数十年にも及ぶ老後の生活や在宅介護を視野に入れると、理想の選択とはいえません。

自分の健康や安心を直接担保しない家電製品にお金を使って、健康や介護に直接的な影響を及ぼす暑さ寒さを我慢するなど、本末転倒。

誤解を恐れずにいえば、どうせ、これまでも夏は暑い、冬は寒い環境で過ごしてきたのですから、欧州のように、何も冬で全館20℃(夏は全館28℃前後)の室温にすることはなく、18℃だって20℃(冬)、29-30℃(夏)だっていいのです。

冬は少しだけ重ね着をし、夏はエアコンも使うが扇風機やウチワも使う。

それでも局所的な冷暖房ではなく、全館均一な温度分布にするといった温熱環境をめざすのです。

そうした住環境が、これまでの古い家での光熱費程度で実現できれば、誰も文句はないはずです。

 

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by Bliss My HouseIdea

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

躯体の省エネと設備の省エネ

この数十年、日本の家は欧米の影響を受け、かたちが大きく変わってきました。和と洋が混とんとし、生活のかたちも座から立、その混合へと変わり、西洋の家具も当たり前に日々の暮らしを支えています。

しかし、全館(冷)暖房という目には見えない生活のあり方を見逃してきたのです。

それをできるだけエネルギーを使わずに実現する住宅性能があることにも、日本人は気付かずにきました。

 

使い捨てのモノや安っぽい家具、たくさんの家電製品に囲まれながら実は、無駄な我慢ばかりで、安心とはかけ離れた生活を選択してきたと言い換えてもよいのかもしれません。

EUでは一次エネルギーの使用量で家の性能を義務付け熱損失係数=Q値に換算すると0.7程度の性能を要求しています。

日本では次世代省エネルギー基準の北海道仕様でも1.6W/㎡・Kですので実に2倍以上の性能です。

日本では、次世代省エネルギー基準の義務化に向けた動きがありましたが、結局は見送りになりました。

この制度が定着したとしても、新築の全棟が北海道仕様になることはあり得ません。

国ではZEH(ゼロエネルギー住宅)を推進していますが、大掛かりな設備でゼロエネにすることばかり考えており、建築的に割安にできる断熱・気密の仕様を高めようとする発想がないのです。

 

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by Bliss My HouseIdea

 

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暖かいと「寒くない」の差?

断熱・気密性を高めた家では、冬は暖かくではなく「寒くない」、夏は涼しいのではなく「暑くない」という自然な温熱環境を得ることができます。

気密性を高めることで計画的な換気が可能になり、湿度は適度に調整され、24時間健康的な空気の中で過ごすことができます。

新型コロナが大流行した結果、窓を開ける換気が推奨されていますが、真冬に窓を開けるこの愚作に、住宅業界から反論も起きません。計画的に換気のできる性能を備えた家がまだまだ少ないからです。

 

 

断熱性を高めると、壁や天井、床、家具などからの輻射熱効果も高まり、暖房設備を強で使わなくても、温度のやわらかさのようなものが実感できます。

Q値1.6W/㎡・K前後の性能では、従来、リビング一室で使用していた程度の冷暖房費で屋内全ての場所を同じ温度にすることもできます。

こんなにオトクなことはありません。

そうした家で試みる2、3℃の温度差の「我慢」は、昔の家のような強靱な精神力や身体能力を要するものではないのです。

 

できればEUレベルの住宅性能を確保し、嗜み程度の「我慢」も実践する。そうすることで、快適さを得ながら欧州諸国の5分の1程度だった暖房費を6分の1、7分の1にまで節減することも可能になるかもしれません。

何もかも欧米に倣えの生活ではなく、日本人ならではの民族特性を生かした省エネ住宅、ミニマム生活の実践です。

無駄な家電製品に囲まれた電脳生活も見直しが必要でしょう。

そうしたライフスタイルは、世界から賞賛されるほどの可能性を秘めていると考えるのは、私だけでしょうか。

 

 

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エアコン暖房が主流になりつつあるが、理想は温水パネルなどの輻射熱暖房。イニシャルは高くなるが、低温度でも初夏のような爽やかな暖房感。

 

www.ienotomo.com

 

 

 

In summary

省エネで健康的な環境を有した住まいは、そこで介護も看取りも可能にできる環境を備えた住まいでもあります。設計する際の優先順位は、

1.断熱・気密性能の向上

2.計画換気(24時間)の徹底

3.高効率の暖冷房・給湯設備の導入

4.真冬の室内では1枚厚着、真夏の室内では扇風機などのアナログも併用=少しの我慢。5.太陽光発電などの自然エネルギーの導入。ただし、上記1.-4が優先。予算がなければ不用。

 

断熱性能が低い建物に高額かつ高効率な省エネ設備や新エネ機器を導入しても、本来の省エネとはかけ離れ、効果は薄い。潤沢な予算がある人は限られます。だったら、太陽光発電など後回しで、面積を狭め、躯体の断熱・気密性能を限りなくアップさせます。これが、ゆたかなミニマムライフです。