Where we belong.=【家を知る・家に住む・この家で生きる】

そして、私たちの「居場所」について。

【屋根】=軒先にツララができるのは、天井から熱が逃げっぱなしの証拠。

 

  

 

 

 

 

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日本でいちばん寒いところで、暮らしたことがあります。寒いのは苦手ですが、冬という季節は大好き。雪景色もきれいですが、晴れた日、家々の軒先にズラリと並んだツララは、お日様の光を湛え、まるで水晶のように輝いて見えます。子どもたちの玩具としても、ツララは人気もの。しかし昨今、北国を旅しても、ツララの多い家へめっきり少なくなりました。これは住宅の断熱性能の進化といってもいいでしょう。少しだけさびしい気もします。

 

Contents.

 

宝石みたいにきれいなツララ

北国に住む子どもたちにとって、ツララは、外遊びには欠かせない玩具でもありました。

 

鋭く長いツララは刀がわり。

友だちと、えいっ、やっ、とチャンバラごっこをするのです。

 

ツララをぶつけ合うとすぐに割れてしまいますので、カチンカチンと音がなる程度の寸止めでやめておきます。

 

互いに割れるのを覚悟して、えいっとかち合わせて、クライマックス!

 

小さいのが二つくっついたツララは、ピストル。

手に持ちやすいようにかたちをつくって、バンバンと撃ち合います。

 

大小長短が重なり合ったツララは機関銃。

ずっしりと重いそれはなかなかの迫力で、外国のソルジャーになったような気分になれます。

 

そんなやんちゃな男の子たちも、ツララの美しさには、ときにうっとりして、眺めてしまいます。

 

お日様に透かして見たり、青い空を映してみたり。

 

雪の景色もきれいですが、遠くで眺めても、手にとって眺めても、ツララのきれいさは格別だったことを思い出します。

 

 

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どんな玩具にもなってくれた

男の子たちに比べると、女の子たちは、遊び方も上品です。

 

雪の上に、いろんな形のツララを並べて、お人形遊びをしたり、木琴のように音を出してみたり、アイスクリームみたいに、ぺろぺろなめっている女の子もいました。

 

男の子たちは、女の子たちがせっかく作ったツララの木琴を、刀がわりの大きなツララで、ガチャっと壊してしまったりするのですが、そんな悪戯はまだマシなほうです。

 

学校の帰り道など、女の子たちのランドセルを後ろからそっと開けて、ツララの塊を突っ込んで、泣かせてしまう男の子もいました。

 

親友だったA君は、郵便ポストの中にツララの塊をいくつもぶち込んでいました。

いまでは犯罪扱いされてしまいますが、あのポストの郵便物はいったいどうなったんだろうと、いまも思い返します。

 

 

 

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ツララ落としは仕事のひとつ

大人たちは、軒先のツララ割りが冬の大切な仕事の一つ。

 

ツララの根っこの部分は屋根に沿って長く大きな塊となっていて、そのままにしておくと、軒先が傷むだけでなく、落ちてきたときに危険なのです。

 

寒さの緩んだ日など、塊が軒先から落ちてきて、それで頭を切ってしまうような事故が、ひと冬に何度も起きました。

友だちのB君も、落ちてきた氷塊で頭のてっぺんを7針も縫う大けがをしました。

 

梯子をかけ、つるはしを持って、軒先の氷塊を叩き割る作業は容易ではありません。

 

氷の下にある屋根材を傷つけないように、尖ったほうの反対側の部分で、ガツッガツッと慎重に割っていきます。

割るというより、叩いて落とすといった感じです。

上手にヒビが入ったときは、上手に薪割りができたときみたいに、うれしい気持ちになります。

 

お父さんたちがそうして落とした大き目の氷塊は、ツララとはまた違った玩具となり、子どもたちはまたそれを削って、ロボットの形を作ったり、それらをいくつも積み上げて、要塞のようにしてまた遊ぶのです。

 

こうして振り返ると、厳寒の屋外でも、無数の遊びがあったことを懐かしく思い出します。

 

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ツララの有無でわかる断熱性

この数年、冬に北国を旅すると、どの家にもほとんどツララがないことに気付きます。

ツララのあるのは、何十年も前の古い家かアパートだけで、新しい住宅にはあまり見あたりません。

 

このツララで、断熱・気密といった性能がわかります。

ツララができる原理は簡単。

屋内の熱が屋根から逃げて雪を溶かし、それがゆっくりと凍ってツララとなるのです。

 

ツララができるのは、特に屋根の断熱が弱く、躯体全体の気密性が低い証しでもあります。

 

北国に住んでいる人は、散歩の途中にでも、近所の家々の軒先を眺めてみてください。

新築の家でも、ツララがぶら下がっている家とまったくツララのない家があることに気付くはずです。

 

家の中の暖気が逃げて、ツララを作っているとしたら、何だか、もったいない気がします。

 住宅の内外での熱の移動

※資料 資源エネルギー庁

 

 

 

 

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いまだ理解されない住宅性能

何年か前の冬、東北北部の公営住宅を調べたことがありました。

東京のコンサルによるものとのふれこみでしたが、全ての窓は結露だらけで曇りガラスのような状態でした。

 

どの家、どの(集合住宅の)棟にも、大きなものでは1メートル以上のツララが軒に連なっています。

 

家の寿命はそう長くないことは明白です。

 

何より、そこに住む人たちは100%の確率で、日々の暮らしで、結露やカビに悩まされ、エネルギーの垂れ流しのような状態を余儀なくされているはずです。

 

断熱・気密などの住宅性能は、クルマでいうと、リッターあたり何キロ走るかという燃費を測る目安と同様のものです。

 

特に北国に住んでいる方々は、新築やリフォームを計画し、ビルダー選びに迷った際、選択肢にあるビルダーの建てた家の軒先を見学してみてください。

熱が逃げっぱなしの屋根のある家に住む必要はないのです。

 

ツララが少なくなるのは寂しい気もしますが、いまの子どもたちは、そんな遊びになど興味はないのかもしれません。

 

 冬の暖房時に外に熱が逃げる割合の例 夏の冷房時に外から熱が入る割合の例

※資料 資源エネルギー庁

 

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In summary
天井・屋根から熱が逃げる→屋根の氷や雪が溶ける→翌朝の冷気で滴がツララになる→ツララは屋根を傷める→熱が逃げるということは無駄なエネルギーを使い続けていることでもある→何もいいことがない。「いえ、わが家も北国で暮らしていますが、ツララはありません」という方もいますが、そのお宅は、よほど天井、屋根の断熱がしっかりしているか、屋内の温度が低い、2階の居室で暖房を使用していないのどれかが理由と思われます。