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【ZEH(ゼッチ)】=国が推進するゼロエネ住宅は本当に、快適でゼロエネルギーで「お得な」なのか?

 

 

 

 

 

 

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ゼロエネルギー住宅、ネット・ゼロエネルギー・ハウス、エコハウス、パッシブハウス、ソーラーハウス、低酸素住宅、ZEH(ゼッチ)などなど、住宅にまつわる難しい言葉が飛び交っています。出口の見えない不景気、一向に上がる気配のない給料、高騰を続ける物価や光熱費、新型コロナの流行…といった状況下。大半の人が、そうした住宅はお金持ちだけが建てられる住宅であり、自分には関係ないと思っているに違いありません。これらのカタカナ住宅の大半は、エネルギーをセーブする住宅のこと。行政や住宅業界、多くの研究者が声高に省エネを叫んではいるものの、実際、日本人のほとんどはいまも、住宅を「買う」状況が続いています。住宅は本来、「建てる」ものですが、人を守り、エネルギーをセーブするはずの性能はというと、国際的に低水準なまま推移しているのです。

 

 Contents.

 

家電に及ばない住宅の省エネ技術

クルマや家電製品の省エネはものすごいスピードで進化しています。

 

クルマは燃費の向上を訴え、家電製品も省エネ性能の高さを謳い、私たち生活者は難しいことを勉強したり、考えなくてもリッター30キロ以上も走るクルマや以前の数分の一の電気代で済む家電製品を手に入れることができます。

10年前の製品より電気代が激安になるエアコンや冷蔵庫、電球などは、どこのお店でも購入できるようになりました。

 

カタログには例外なく、燃費や消費電力などが明記され、お父さんもお母さんもおじいちゃんもおばあちゃんも、以前のクルマと新車では年間何リットルのガソリンが節約でき、ガソリン代は一年で何円安くなるといった試算ができます。

燃費がわかれば、おのずとどれだけコストが節約できるかがわかるのです。

 

しかし、住宅の省エネはというと、残念ながら、日本は先進国では最も遅れているようです。

 

日本には我慢や苦労が美徳、という風土がありますが、家電やクルマではもっともっとと省エネが求められても、どういうわけか、住宅というキーワードで考えると、有史以来、今日まで寒い冬には寒さを我慢し、暑い夏もそれにじっと耐えながら過ごしてきた長い歴史がありました。

 

日本ならではの知恵や工夫、技術を生んではきましたが、結果として、日本の住宅が他の国よりエネルギーを消費せず健康的に暮らせる家かといえば、けっしてそうとはいえない現実があります。

 

照明や冷暖房設備などは高い省エネ技術が駆使されていますが、住宅の構造そのものは、断熱も気密も低レベルのまま。

住宅は、エネルギーを垂れ流すだけの存在でしかないようです。

 

日本の家電メーカーの技術がここまで高く発展してきたのは、皮肉なことに、住宅性能のあまりの低さを補おうとしてきたからなのです。

 

 

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付加断熱でEU水準の断熱仕様とすることで、大空間でも床面と天井付近との温度差は限りなくゼロとなる。by Bliss My HouseIdea

 

 

 

 

 

 

 

全ての住宅が健康優先仕様の欧州

数年前、ドイツの研究者が日本の住宅を視察したとき「(特に寒い地域での)温熱環境は、欧州の11世紀のレベル」といって日本人の「無駄な我慢強さ」と住宅性能の低さに驚いていたことを忘れられません。

 

かつての日本の軍隊が「苦しむことにかけては世界一のレベル」と評した心理学者がいました。

その苦しみが判断力や批判力を破壊し、他国まで行って、ひどいことをした歴史とあながち無関係とは言い切れません。

我慢や苦労はそれの限度を超えると、人間の理性を壊してしまうこともあるのです。

 

EU諸国では「全住宅、全建築物の省エネ性能の表示」が義務化されているのは周知のとおりです。

 

2020年までにEU内で最もエネルギー効率が高い国になることを目指すフランスは2050年までに温室効果ガス(GHG)排出量を90年比で4分の1の水準に削減する(年当たり平均3%減)」ことを目標に掲げています。

 

新築建築物については、床面積1平方メートル当たりの一次エネルギー消費量を年平均50kWh未満に抑え、2013年1月から全ての新築住宅に同基準を適用。

高効率ボイラー、ヒートポンプ、断熱材、クリーンエネルギー生産設備など省エネ関連器具の購入支援策も充実しており、原発推進国でありながら、きめ細かな省エネ政策が網の目のように張り巡らされているのです。

 

ヘナヘナ、スカスカの住宅で、高効率の設備にオンブにダッコで省エネ住宅を謳う日本とは異なり、高い住宅性能と高効率設備とのタイアップで、省エネかつ健康的な温熱環境で暮らせる欧州とでは、同じ省エネ住宅でも、その質がまったく異なることがわかります。

 

 

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可変性を基本とした子ども部屋。あらかじめ出入り口を2つ設け、子どもの成長に応じて間仕切りをする。こうした空間も高断熱・高気密が前提となる。

 

 

 

 

 

 

 

省エネ基準は先進国で最低レベル

新築のみならず、中古住宅までリノベーションなどで性能を上げ、燃費をよくすることは、住む人の健康や福祉にも直結します。

 

住宅を整えることで職人の雇用創出を図り、住む人の病気を未然に予防し、介護や看取りまでも可能にし、大規模施設への投資を抑制することができるようになります。

エネルギー消費量を減らすことで景気の下支えをし、国家全体の利益につながります。

 

日本の省エネ基準は、1980年(昭和55年)の省エネ法の制定以来、法律の改正ごとに強化されてきました。

2013年(平成25年)に改正された現行の基準においては、外皮性能に加えて、住宅全体で使用するエネルギー量の二面から住宅の省エネルギー性能を評価。

日本全国を気候条件に応じて8つの地域に分け、その地域区分ごとに基準値が示されています。

 

しかしながら、この基準さえも、EUレベルには遠く及ばず、日本の住宅の省エネはまだまだ設備頼りで躯体性能は貧弱なまま推移しているのです。

 

 

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ZEH 用の設備費用は回収できるか

近年注目されているのが、ZEH(ゼッチ)(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)です。

 

「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅」

というのが国の定義。

 

早い話、断熱などによってエネルギー消費量を抑制するだけでなく、太陽光発電などでエネルギーを創り出し、年間の一次エネルギー(※)消費量の収支をプラスマイナスゼロかプラスできる住宅をいいます。

 

最大のメリットは、ランニングコストを抑えられること。

エネルギー消費量が正味ゼロになるだけに、光熱費も正味ゼロにできる可能性もあります。

 

大き目の太陽光発電を設置した場合は、売電収入で収支がプラスになることも期待できるでしょう。

 

 しかし、断熱性能を高め、省エネに優れた設備や創エネ設備を導入するには、初期投資(イニシャルコスト)の増加は避けられません。

 

 メンテナンスコストを考慮することも大事です。

太陽光発電を設置する場合、固定資産税の課税対象になりますし、耐震性や防水性など屋根や構造の補強が必要なケースもあります。

パワーコンディショナーは10〜15年で交換しなくてはなりません。

 

太陽光発電は災害時にも電気を使えると思っている人が多いのですが、使用できる電気は冷蔵庫1台に充填できるかどうかという程度。

もちろん、太陽が沈んでしまった夜には、蓄電池がないと電気は使えません。

この蓄電池の高いこと!

 

住宅本体の構造、高断熱・高気密化をおざなりにしたまま、これらの高価な設備導入で、力ずくのZEHを実現しようとしているのが、いまの日本の現状のように思えてならないのです。

 

※一次エネルギー/石油、石炭、原子力、天然ガス、水力、地熱、太陽熱など、加工されない状態で供給されるエネルギー。「一次エネルギー」を転換・加工して得られる電力、都市ガスなどが「二次エネルギー」。

 

 

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※ZEHの概念 資源エネルギー庁

 

 

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ZEH仕様にするには設備が先ではなく、躯体の断熱性能の限りなく高い担保が大前提。そこを誤ると、快適性と健康を無視した省エネ住宅となる。

 

 

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※ZEHを構成する要素 資源エネルギー庁

 

 

 

 

 


 

 

 

健康・快適・省エネを同時に実現

省エネ、省エネといってきましたが、日本の家庭におけるエネルギー消費はアメリカの半分、イギリスの6割、ドイツの7割程度と、実際にはそれほどエネルギーを使っていないのをご存じですか。

 

暖房エネルギーだけで比較するとアメリカ、イギリス、ドイツの4分の1しか使っておらず、日本の東北地方では、寒い地方ですのにそれらの国の2分の1くらいしか使っていません。

 

数字だけで判断すると、これ以上の家庭での省エネは乾いた雑巾を絞るようなもののように思えますが、根本的な価値観の相違が、実はそこにあるのです。

 

先に述べた国の大半では、冬期、屋内の温度が20℃以下になる住宅は「公衆衛生」の観点から、人間生活に適した環境ではない、と判断しているのです。

 

換言すると、何があっても住宅内の温度は20℃を死守する。

人のために、です。

人の健康が第一で、省エネは二の次といっていいのかもしれません。

 

健康を守るためのエネルギーは、法令でも技術でも何でもありでEnergy savingにトライしていく、といった考えで住宅を捉えているのです。

 

背景には、そうした施策のほうが、結局、医療や福祉の関連でもお金がかからないで済むといった周到な試算があってのことといえます。

 

同じ住宅の省エネでも、環境で捉えるか、人の健康も含めて考えるかで、こんなにも住宅の有り様が変わってきます。

そろそろ、日本人の我慢強さを、もっと違うところに使うことを考えた方がよさそうです。

 

 

 

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In summary

日本の国民医療費は42兆円を超え、2040年には66兆円を超えるとの試算もあり、医療費の増大は収まりそうにありません。

 

その背景には、さらに進む高齢化と、いまだ性能が未熟な住宅がまん延しているという現実があります。アメリカの2倍ともいわれる建築コストを費やしながら屋内は温度差だらけ。日本の住宅の省エネは法令でも建築技術でもなく、国民一人ひとりの「我慢強さ」に支えられてきたのではないか。そんな意地の悪いことを考えてしまいます。

 

脳卒中や心臓疾患などヒートショックや家庭内事故を増産し、世界で例のない高齢化社会なのに、住宅での介護もままならない、30年足らずの寿命しかない、名ばかりの「終の棲家」がいまも当たり前に供給され、設備偏重のZEH実現の前に、考慮すべきことは山ほどあります。

 

設備はいつでも購入、交換できますが本体の断熱・気密性能は建築時だけしか確保できません。このことを忘れてはなりません。