Where we belong.=【家を知る・家に住む・この家で生きる】

そして、私たちの「居場所」について。

【景観】=普遍的なデザインを家づくりに生かすための洞察。

 

 

 

 

 

 

 

 

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新しい価値は、歴史観に基づいてこそ、普遍的な価値へと昇華します。変わっていいこと、変わらなくてはならないこと、変わってはいけないこと。

Contents.

 

熱的性能では先進的な北海道の家

昨年秋、4日間ほど北海道に行ってきました。

旭川では研究所を訪ね、札幌では旧知の建築家と会って、久々に近況などをうかがいました。

 

電車の車窓から眺めたり、街を歩きながら北海道の家を見るたびに、いつも思うことがあります。

一つは、ほとんどの家が熱的性能が高く、暑い寒いといった基本的な問題が解決されていること。

 

半世紀以上も前の家には、そうでもない家も多いのでしょうが、割合からすれば、それらを含めて熱的性能は日本でもっとも高いレベルにあるといっていいかと思われます。

 

札幌などの若い人は、真冬でも半袖シャツのうえに分厚いダウンやコートを羽織っているのが当たり前。

 一般の家はもちろん、オフィスや商業施設など、どこでも決して寒い思いはしないという安心感の表われです。

 

省エネ性能がいくら高いとはいえ、そうした文化にいささかの疑問は残るのですが、当たり前に、どこでもほぼ同じ熱的な環境が実現されていることは、日本の中では先進的といえます。

 

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オランダ・アムステルダム。建物の色、デザインが一つひとつ異なるのに、全体で眺めると統一感がある、という嗜み。

 

 

 

 

 

 

家にも街にも表情が感じられない

もう一つ。

これは、問題点なのですが、北海道の家や街には「顔」が感じられないことです。

 

無落雪の角型、三角屋根、中途半端な洋風、和風、黒や赤やブルーや黄の色とりどりの外壁など、どの街に行っても、家に「顔」はなく、街並みの統一感がまるでありません。

 

戦後、全国どこの街でも問題にされてきたことでもありますが、北海道は歴史が浅いだけに古い街並みや町屋は少ないといった歴史的な背景があります。

 

以前、道内に住む著名な作家にこのことを話しましたら「北海道の街がきれいに見えるのは、雪の日の夜だけかもしれない」といっていたのが強く印象に残っています。

雪に覆われ、暗くなってからしか、街はきれいには見えませんという意味です。

 

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おなじみの大阪・道頓堀。海外から帰って日本の都市を歩くと、他のアジアの国々と同じカオスとエネルギーを感じる。これはこれで嫌いじゃない。いや、安心感さえ覚えてしまう。

 

 

たった数年で古ぼけてしまう外観

書棚を見ると、20年経っても、手に取った瞬間、また深読みしたくなるような本があります。

近年、ミリオンセラーになったような本でも、翌年には中古でも売れない本があります。

 

家も同様です。

 

北海道に限らず、全国どこの地方でも、街の表情は均質化し、個性化の名のもとに、田んぼや畑の真ん中に、プロバンス風や北欧風の家が建ったりしています。

 

一見、スタイリッシュに見えるビルダーの「商品」や建築家や住宅デザイナーが手掛けた家でも、数年経つと周囲にあるどの家よりも、みすぼらしく見えることは少なくありません。

 

建てる方、売る方、施主側も、カタログ販売で何かモノを買うときのように、家を買ったり、建てたりしてしまいます。「商品」という言葉を使ったのは、そのためです。

 

「計画を立てるには歴史観を持たねばできません」

と述べたのは、建築家の浅田孝でした。

 

10年後の計画をつくるなら、少なくとも30年前までさかのぼって知りなさい。

20年後の計画をつくるなら、少なくとも50年までさかのぼって知りなさい――というのです。

 

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京都の裏通り。面白くもなんともない伝統家屋がどうして美しく、そして懐かしく思えるのか。

 

 

 

 

 

 

 

時代を超えて伝わる家や街の価値

これまで生きてきた土地や人の営みの堆積を知ることなく、将来への投資などはできない、という意味でもあるでしょう。

 

これから100年もつ家を建てるには、150年、200年前の人の営み、土地や家の歴史を知らなければならない、という解釈もできます。

 

流行にとらわれず、営々と継承されてきた暮らしの細部、土地の風俗・文化、家の形状有り様などを学ぶことで、時代を超えて未来に伝わるべき家のかたちが見えてくるかもしれません。

そうした行為は歴史や伝統、先人たちへの敬意の体現でもあります。

 

メディアの世界でも、数時間、1日でゴミになってしまうような情報があふれかえっています。

自戒を込めての話ですが、ブログやツイッターのなかにも、編集されない言葉が飛び交っています。

たった1日ではなく、数分で消え去ってしまうような言葉の意味を、私たちはいま一度検証してもいいようです。

 

変わらないということを、大切にしたいこと、ものがあります。

大切なことを伝えるために、変わらなくてはならないことがあります。

 

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都市の残像。街は、表の顔だけではつまらない。

 

おすすめの本

 

戦後日本において「都市とはどうあるべきか」に立ち向かった浅田孝(1921- 1990)。南極昭和基地の設計をはじめ、横浜市の都市計画の骨格をつくり、大阪万博、沖縄海洋博をプロデュース。少子高齢化の真っただ中にある現在の日本でも、メッセージは生々しく届いてきそうです。