Where we belong.=【家を知る・家に住む・この家で生きる】

そして、私たちの「居場所」について。

平凡な毎日を、自分の手で、希望に変えること=【すばらしい季節】。

 

 

 

 

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あなたが気づいてくれるのを 

サリーは 農場に すんでいます 冬から春へ 夏から秋へ 季節がかわっていくとき サリーは じぶんのからだを ぜんぶつかってそれを たしかめます

 

という文章から始まって、サリーという少女が、

 

「目でみて 耳できいて においをかいで手でさわって 口にいれてみて季節が かわっていくようす」

 

を感じ取っていく、というお話。 

ページ数もわずか36ページしかありません。

絵本作家ターシャ・テューダーの「すばらしい季節」です。  

 

 

【すばらしい季節】ターシャ・テューダー/作・絵

末盛 千枝子/訳  現代企画室 2014年6月刊行

定価1500円+税

B5変上製・36頁  ISBN978-4-7738-1413-2 C0771

 

春には、野の花を見つけ、小鳥のうたを聴き、夏になると、

「いちにちじゅう ほし草づくり」

を眺めながら野ばらに夏のにおいを全身で感じます。 

 

どんぐりやりんごに秋を見つけ、つめたい空気とたきぎのにおいを感じとって、冬をそこに発見します。

 

エピローグは、

あたなのまわりにもこんなにすばらしいことが たくさんあってきっと いつも あなたが 気がついてくれるのをまっています

 

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その世界は私たちの目の前に

本にはノンブルもなく、各ページにはサリーの絵と2行から4行くらいの文字しかありません。

 

しかし、サリーという少女が五感を駆使して(それも力ずくではなく、ごく自然に)自然の営みを感じ取り、それが私たちにも、こっちにおいでよ、ほら感じてみない? とばかりに、その世界にいざなってくれるのです。

 

そのサリーが五感を駆使すると、

水仙の花と 黒い土からは 春の においがします

 

かえでの木から とった みつを 雪にかけて たべると やっぱり 春の あじがします

と、こんなふうな言葉になります。

 

その世界は、遠い世界ではけっしてなく、私たちの家から一歩外に踏み出した、すぐそこにある世界です。

 

1966年、ターシャ50歳の頃の作品。

当時のアメリカは、ベトナム戦争に介入し始めたものの、いまと同様、繁栄を謳歌していました。

 

ターシャは、1971年、56歳の時に、昔から住みたいと願っていたバーモント州に広大な土地を見つけ、そこに18世紀風の家を建てて住み始めます。

 

建物も庭も自らのデザインでした。

「四季を愛し、山羊、鶏、猫、犬、ガチョウなどに囲まれ、朝日と共に起き、自然と歩む」

という暮らしは、NHKで紹介されると日本でも大きな反響を呼びました。

 

2008年6月18日、92歳で永眠。

70年の間に出版された本は、100冊以上に及び、この本も、静かなベストセラーであり続けています。

 

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幸せへの近道を選ばないこと

家も一つの宇宙、世界といえなくもありませんが、自然界のスケールの大きさには及びません。

 

デザイン、性能、家具、構造…これらのものを家に求めることは大切なことではあります。

 

反面、私たちは道ばたに咲く野の花やきのうとは少し違う空気や温度、樹木の葉の色や小鳥のさえずり、空の色の深さや雲のかたちを感じることに、いささか鈍感になっています。

 

家のなかに自然を再現するのもいいのでしょうが、一歩外に足を踏み出し、五感で自然の営みを感じ取る力を養うことも大切です。

 

サリーは自らの身も心も自然のなかに置いて、何の計算もなく、自然の一部としての人間であることを信じ切って、それと一体化しようと試みます。

 

私たち人間が、自然の営みのなかで位置するポジションは無に等しいくらい小さなもの。

 

だからこそ、つかの間の【生】の意味を問い続け、自然のなかでそれを確認する姿勢と時間が必要なのでしょう。

 

絵を通して自然、人間、いのち、宇宙の営みを考え、私たちに気づきとこの世界に生きる歓びを与えてくれたターシャ。

人間と自然とを結びつけるための言葉が、どのページを開いても大切に紡がれていることに気づきます。

 

とはいえ、現実はというと、憎しみや悲しみ、諍いの絶えない日々。

私たちは楽しいことより、負の感情に日々揺さぶられながら生きているともいえます。

 

テレビのなかで語っていたターシャの言葉が忘れられません。

平凡な毎日を、自分の手で、希望に変えること。

人生は短いのよ。

文句を言っている暇などないの。

目の前の幸せを、精一杯味わうこと。

いちばんのコツは、近道を選ばないこと。

 

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老いてもなお美しく見えるのは、背景にあるガーデンのせいだけではないでしょう。「目の前の幸せを、精一杯味わうこと。いちばんのコツは、近道を選ばない」というその生き方が全身から感じられ、美しさを感じるのかもしれません。

 

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