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【エアコンと暖房】=住宅性能+APF(エネルギー効率)=を理解する。

 

 

 

 

 

 

 

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by CASA SCHWANCK 

 

かつて、エアコンといえば「冷房」のイメージが強く、特に北国では「暖房」に使うことが難しい時代がありました。しかし、設備の性能と同時に、断熱などの住宅性能の進化に伴い、エアコンは四季を通じて使用できる設備として、日本の暮らしに定着しつつあります。だからこそ、少しでも性能のいいエアコンを選びたいところですが、その基本的な考え方についてまとめてみました。

 

Contents. 

 

熱を汲むヒートポンプ

電力会社のCM、あるいは洗濯乾燥機のCMなどで最近よく耳にするのが「ヒートポンプ」。

最新の技術のようだけど、正直いって、なんだかよくわからない…。

そんな人も少なくないでしょう。

 

このヒートポンプ、実は、最新の技術などではなく、ずいぶん以前から冷蔵庫などで幅広く使われてきた技術なのです。

エコキュートという給湯器でも使われており、洗濯機でも採用され、いまやどの家庭には当たり前のように入り込んでいます。

 

ヒートポンプとはその名の通り、「熱」を汲み上げる「ポンプ」の意味。

空気など自然界からの熱を集め、熱エネルギーに転換する仕組みを指します。

エアコンは空気熱が多いのですが、なかには地中熱、水から熱を汲むヒートポンプもあります。

 

これまで、お湯を沸かしたり暖房したりするには、化石燃料を燃やして数百度の熱をつくり出さなければなりませんでした。

しかし、実際の生活では、暖房や給湯に必要な温度はせいぜい30〜50℃程度。

そんなに高温はいらないことがわかります。

従来の暖房・給湯機器が、必要以上に高い温度をつくって、多くのCO2量を排出してきた背景も見逃せません。

 

冷蔵庫やエアコンなど「冷やす」場合には、ヒートポンプに代わる方法はないといってもいいほどですが、暖房など暖めるためのヒートポンプも日々、進化しています。

 

 

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ヒートポンプは空気中の熱を ポンプのように汲み上げて、必要な場所に「移動させる」技術。

参照:ダイキン

 

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Photos by Sweet Potato..

ヒートポンプを利用した温水輻射(パネル)暖房(左側の壁)とエアコン(右側奥の壁)の併用で四季を通じて、快適な温熱環境をつくる。高断熱・高気密という性能化が前提となる。この物件では、窓際に蓄熱タイルを設け、日射の取得にも配慮している。

 

 

 

 

 

性能はAPFで判断する

ヒートポンプ設備の代表ともいえるエアコンや冷蔵庫の性能を表わす指標として「COP(=Coefficient Of Performance)」があります。

 

消費電力1kW当たりのエネルギー効率(冷却・加熱能力)を表す数値ですが、例えば「COP3」は「1」の電力を投入すれば「3」のエネルギーの熱が得られるという意味になります。

わかりやすくいえば、「COP3」ですと、1000Wで3000W分の熱として使えるということ。

 

近年はCOPに代わり、「APF=通年エネルギー消費効率」という値が使用されることが多くなりました。

 

COPは一定の温度環境下における効率を示す数値。

実際には、そのときの室温や外気温でエネルギー消費効率は左右され、COP値と同じ効率が得られるわけではありませんでした。

 

新たな指標となったAPFは、1年間でどれだけの電力を消費したかを「期間消費電力量」として算出し運転効率を示します。

値が大きいほど、1の電気で処理できる熱量が多くなるのは「COP」と同じ。

 

ヒートポンプで温水をつくり、各室のパネルヒーターや床暖房に35 〜55 ℃程度の低温水を送るヒートポンプ温水暖房も注目されています。

ここでも、省エネ性能はエアコンと同じくAPFで判断します。

 

温水暖房のメリットは乾燥感が少なく、低温であることによる良質な輻射熱、優れた制御性により安定した室温を維持できることなど(高温が快適なのではない)。

高断熱・高気密の住宅に適した理想の暖房方式として、欧州では100年以上も前から暖房のスタンダードとして普及してきました。

 

エアコンのメリットは、夏期の冷房としても利用でき、除湿機能などを含め、オールシーズン活用できること、初期投資が割安であることなど。

 

簡単なスイッチ操作で立ち上がりが早く、補助暖房として各室に分散設置することも可能なので、日本ではエアコン暖房が主流になっているのです。

 

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ヒートポンプ温水暖房。低温の床暖房、パネル暖房などに応用できる。パネルの形状はデザインが自在。空間の間仕切りも可能。

 

 

 

 

 

 

 

住宅性能の確保が前提

冷房時の省エネルギー対策はよく「28℃以下」などといわれます。

しかし、実は夏の冷房より、暖房のエネルギー消費、CO2発生量の方が格段に多いことはあまり知られていません。

家庭からのCO2排出量では、冷房は全体の2%なのに対し、暖房は30%前後にものぼります。

 

冷房時の省エネも当然大切ですが、トータルで省エネや省CO2を考えるときには、やはり暖房時の対策が最重要課題です。

 

冷房時も暖房時も、ほどよく快適な室内の温熱環境とは空気の温度ではなく、表面温度がカギとなります。

 

表面温度とは壁や窓、床、天井などの温度のことをいいますが、これらが冷たい熱、暖かい熱を蓄え、逃がさない状態になって初めて快適な温熱環境ができることを忘れてはなりません。

 

そのためにも、冷暖房設備のあれこれを語るよりも、高断熱・高気密などの性能向上が前提といえます。

 

この対策なしに、いくら冷暖房をがんばってみても空気の温度を極端に上げたり、下げたりするしか方法はないのです(日射、通風、庭の微気候などさまざまな要素はありますがここで省略します。過去の記事を参照)。

 

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機械的に暖や涼を得ることばかり考えるのではなく、視覚や聴覚など五感からいかにして「温度」を感じられるかを検討することも大切。

 

 

 

 

 

 

 

 

省エネラベルの★とは

エアコンなどエネルギーを大量に消費する機器については、その省エネ性能を示すラベルが表示されています。

 

基本的に★の数が多いほど省エネになりますが、これは容量ごとに定められた省エネ基準の「最低効率」を100%とした相対的な数字として解釈します。

 

エアコンを選ぶときには「小型」で「APFの高い機種」を選ぶことが基本とされますが、あくまでも住宅の断熱性能、設置場所、個数などを考慮しながら選択します。

 

メーカーはクレームが怖いので熱負荷を大きめに見積りしがちですし、販売店は個々の住宅の性能を確認せず、大きい(高価な)機種を販売してしまうこともあります。

最近の性能住宅ではオーバースペックとなることが多く、無駄にエアコン代、のちのちの電気代を支払うことにもりかねません。

 

カタログに記載された暖冷房能力の目安「◯◯畳」という表示は、断熱等級3程度(平成4年基準)の貧弱な性能を想定したものなので、あくまでも参考程度。

 

販売店よりもむしろ、ビルダーに相応のスペックをはじき出してもらったほうがいいケースもあります。

 

北海道仕様の性能を有する住宅では、断熱の最高等級でもある等級4の3倍もの性能になることもあります。

販売店ですすめる3分の1程度のスペックのもので全館冷暖房が事足りるケースもあるのです。

 

建物の日射取得、通風、蓄熱素材の有無、家族人数、延床面積によっても、機種は違ってきます。

〇畳につけるから「〇畳用」というだけでエアコンを選ばないこと。

1軒1軒、住宅性能が違うのに、最大公約数で選択するというのは、そもそも乱暴な話です。

 

 

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1.本ラベル内容が何年度のものであるかを表示。

2.【多段階評価】

多段階評価基準は市販されている製品の省エネ基準達成率の分布状況に応じて定められており、省エネ性能を5段階の星で表示する制度です。

省エネ性能の高い順に5つ星から1つ星で表示。

トップランナー基準を達成している製品がいくつ星以上であるかを明確にするため、星の下のマーク(◀▶)でトップランナー基準達成・未達成の位置を明示

3.【省エネルギーラベル】

製品の省エネ性能や達成率などを表示。

4.メーカー名、機種名を表示。

5.【年間の目安電気料金】

エネルギー消費効率(年間消費電力量等)を分かりやすく表示するために年間の目安電気料金で表示。

電気料金は、公益社団法人全国家庭電気製品公正取引協議会「電力料金目安単価」から算出。

 

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❶省エネ性マーク

トップランナー基準を達成した(省エネ基準達成率100%以上)製品にはグリーンのマーク(例1)を表示し、未達成(100%未満)の製品にはオレンジの(例2)を表示します。従って、グリーンのマークが省エネ性の優れた製品を選ぶときの目安になります。

❷省エネ基準達成率

その製品が属する、トップランナー基準の区分の目標基準値を、どの程度達成しているかを%で示します。目標基準値は区分ごとに設定されており、この数値が大きいほど、省エネ性が優れた製品といえます。

❸エネルギー消費効率

エネルギー消費効率は、製品ごとに定められた測定方法によって得られた数値を示し、APFのように効率で表すものや年間消費電力量のようにエネルギーの消費量で表すものがあります。

❹目標年度

目標年度はトップランナー基準を達成すべき年度で、製品や区分ごとに設定されています。

出典:一般財団法人 家電製品協会 省エネ家電 de スマートライフ


 

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 by CASA SCHWANCK 

 

 

 

 

 

 

 

 

寒冷地型エアコンとは

Q1住宅(Q値1.0前後の性能を有する住宅)などの高性能熱住宅では、エアコンを建物上部のロフトなどに1台設置するだけで全館冷暖房が可能になります。

繰り返しですが、設備の性能もさることながら、住宅の断熱性能ありきのお話です。

 

エアコンの最新機種では、省エネ法で定められたAPFの目標基準値を大きく上回るAPF値7.0を超える製品も登場しています。

ざっくりいえば(あくまで、わかりやい事例として)7000Wもの熱を1000W程度の電気で得られるのです。

 

いまも流通する電気ストーブくらいの熱を100W電球程度の電気代で得られるといえば、わかりやすいかもしれません。

 

寒冷地型エアコンも普及してきました。

これまでのエアコンとシステムはほぼ同じですが、大きく違っているのが室外機。

冷たい外気から熱を集めるために大型の熱交換器を搭載し、スピーディーに高温にするコンプレッサーを装備。

従来のエアコンよりも一回り上の定格出力を備えた室外機となっています。

 

床上に重点をおいた高温の吹き出しを実現するため、高性能のセンサーを採用しているのも特長。

従来のエアコンでは、霜取り運転で運転が一時的に止まることがありましたが、寒冷地型は運転が連続することで、室温低下にも配慮されています。

 

購入の際は、コンセントプラグや分電盤でのブレーカー交換費用、室外機の底板(ドレンパン)にヒーターを搭載するかどうかなど、本体以外にも、何かと追加費用がかかります。

 

新築・リフォームの際には、計画の段階からエアコンのスペック、設置位置、必要個数などをビルダーと相談する…という選択肢もあるという結論です。

 

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ヒートポンプ温水暖房。写真のパネルは暖房だけではなく、夏期の「涼房」もできるタイプ。パネルの羽に冷水を循環させ、滝の近くにいるような爽快な涼しさを演出。よく見ると、パネルの下部に結露を受けて流す通路が見える。

 

まとめ
 1.エアコンの性能はAPF値を目安にする。この値が大きいほど、省エネ効果が高い製品。省エネルギーラベルなどは、あくまで最大公約数的なスペックな。個々の住宅性能に合わせて選択したい。
 
2.住宅(断熱・気密)性能によって、選択するエアコンの能力が異なる。設計段階から計画することで、吹き抜けなどに1台のエアコンを付けるだけで30~40坪の住宅の全館冷暖房も可能。この場合は、高断熱・高気密が大前提。各部屋に設置する場合は小型のものでAPFの高いもの、が基本。
 

3.家電量販店では標準的なスペックでエアコンが選択されがち。オーバースペックになるケースも少なくない。後付の際にも、ビルダーに設置する位置、台数、スペックなどを相談しながら、選択したほうがいい場合もある。たいがいは、カタログスペックより小さ目のもの、安価なレベルで間に合う。工事の際には、断熱材や防湿シートに穴を開けることになり、細心の注意を払うこと。適当な処理をすると、穴の周囲から結露が発生し、構造材の腐朽に拍車をかける。

 

 4.北国では寒冷地型エアコンも選択肢。単相200Vなので、コンセントプラグや分電盤でのブレーカー交換費用が別途となることもある。室外機の凍結を回避する工夫や積雪対策なども相談しておく。

 

5.暖房の基本は「暖めること」ではなく「寒さを取り除くこと」。高断熱・高気密を前提とすることで、躯体全体に蓄熱し輻射熱によるやわらかな暖房感を得ることができる。ヒートポンプを利用した低温水輻射暖房が理想だが、エアコンでも気流を感じない程度の連続暖房で輻射熱効果を得ることは可能。