Where we belong.=【家を知る・家に住む・この家で生きる】

そして、私たちの「居場所」について。

【キッチン】=「システムキッチン」の「システム」の本当の意味。

 

 

 

 

 

 

 

by Bliss My HouseIdea

 キッチンは主婦の城、と呼ばれたのは昔の話。いまや、家族の数だけ、生活スタイルの数だけキッチンのスタイルがあり、男性も子どもも集うスペースとして大切な空間に変化しつあります。いわゆるシステムキッチンも素敵ですが、自分なりのイメージや作業スタイルに合わせ、ビルダーに造り付けしてもらう選択肢もあります。どちらがいいかという話ではなく、自分たちの生活を見極めることから、計画をスタートさせたいものです。

 

Contents.

孤高を保つ家事空間という考え方

キッチンに立つのが好きです。

煮物など、いわゆる「おふくろ料理」は得意ではありませんが、パスタや中華料理はフライパン一つでできるので、よく作ります。

ザクザクっと材料を切り刻んで、ザバッと仕上げる、男の料理。

 

包丁を持つ手は慎重そのもの。

余計なことなど考える暇はありません。

いつの間にか、仕事のことなど忘れています。  

だから、頭が混乱したときはキッチン。

 

わが家のキッチンは旧式の独立型です。

LDの端っこから右に折れて独立しており、長めの暖簾をかけて、生活感が出にくい工夫をしています。

音はリビングに筒抜けです。

 

急な来客の際にも見られることもなく、料理にも片付けにも集中できるのがメリットですが、子どもたちが小さなとき、目が届きにくく苦労したことと思い出します。

 

 

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Photos by Sweet Potato..

リビングからは死角になる空間にあえて設置された独立型キッチン。家族を意識せず、自分のペースで料理を楽しみたいシニア世代に人気。

 

 

 

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大好きな風景を眺めるためだけに、この位置、このスペースで計画されたキッチン。海外ではメーカーが異なっても、組み合わせが可能なことを「システム」ということが多い。by Bliss My HouseIdea

 

 

 

 

 

 

対面式キッチンの種類とメリット

リビングダイニングの一区画に、壁に向かって設置される「壁付キッチン」はいまも多く見かけます。

LDとキッチンが同じ空間ですので、部屋が広く感じられ、キッチンからの動線はベスト。

昔から人気のキッチンです。

 

キッチンからLD=リビングダイニングを見渡すことができるオープンキッチンの多くは対面式で、いくつか種類があります。

 

調理台やシンク・コンロが壁から離れてアイランド=島のような「アイランドキッチン」は、ホームパーティーをよくする家族に人気。

いつも目に入るため、清掃・片付けは欠かせません。

 

キッチンの左右の片方が壁面についている「ペニンシュラキッチン」は、マンションなどで多く採用されています。

 

対面式の「I型キッチン」は、調理台・シンク・コンロが直線上に並んだキッチン。

吊戸棚があり、リビングから調理台が見えにくいのが特長です。

小さなお子さんがいたり、介護をする家族が視界に入り、安心できます。

 

テレビを見ながら家事をしたいという声も、よく聴きます。

家事の最中でに、家族とのふれあいがほしいという意見もあります。

 

反面、早くテレビを見たい、家族と一緒の時間がほしいから、逆に効率を考え、ささっと短時間で料理をしてしまうという人もいます。

だから、キッチンは独立型がいいという考え方です。

 

家族の世代、共働きかどうか、料理や家事への思想や手法は、いろいろ。

キッチンに正解などないのです。

 

認知症の母を自宅で介護しているとき、症状が進んでも、料理の能力が残っていることに気づきました。

イモの皮も剥き、キャベツの千切りもできました。

味付けも昔のままでしたが、調味料をあちこちにしまい込んで、あとで見つけるのが大変でした。 

このときばかりは、目の届く対面キッチンだったらよかったのに、と思ったものです。

 

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眺望もまた機能。

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キッチンの理想を描けない理由は

レストランを設計する際、コックさんの意見を優先すると面積の広い厨房をつくることになります。

オーナーの要望を優先すると、厨房を狭くして席数を多くとり、お客さんをたくさん入れたがる、そんな話を聞いたことがあります。

 

予算さえあれば、住宅でも、前者がいいに決まっています。 

 

しかし、家庭のなかでの調理役は奥さまだけとは限りません。

男性だって料理好きの人はいますし、パーティーが好きで、週に一度はお友だちを招いて、ワイワイ食べたり飲んだりする家庭もあります。

一人暮らしでも料理好きの人とそうでない人とでは、キッチンのかたちも大きさも異なるはずです。  

 

そうはいっても、ほとんどの場合、新築時には100万円、200万円といったシステムキッチンを入れてしまうケースがほとんど。

 

CMや雑誌の広告で見たキッチンしか、頭に浮かんでこない。 

私たちは、キッチンの原風景を持ち合わせていないのかもしれません。

 

 

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バーカウンターみたいなミニキッチン。少人数の家族はいたずらに広いキッチンは不要。

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システムキッチンの「システム」

キッチンに必要なのはシンク、コンロ、調理台、収納など。

これらをコンパクトにまとめれば、広いスペースは必要ありません。

冷静に考えると、高価なシステムキッチンも絶対必要なアイテムとはいえなくなってきます。

 

確かに、日本のシステムキッチンは、ラインナップが豊富。

デザインも機能もシステム化されているかのように見えます。

 

しかし、どこかが壊れて部材や部品の交換の際、システムとはいえ、メーカーによって規格はバラバラなことに気づきます。

A社とB社を組み合わせることも難しく、同じメーカーでも数年経って規格が変わり、古いものと新しいものとを組み合わせることも難しい場合もあります。

 

同じプレハブ工法やユニット工法でも、リフォームの際にはその会社の材料でないと改修ができないことと同じ。

在来工法や2×4工法は、大工さんが違っても改修が可能ですが、ハウスメーカーでもシステムキッチンでも、こうしたケースが多いのは日本ならではです。

 

アメリカでは、こうした規格化が部材の末端まで進んでいるからこそ、素人でもホームセンターで購入した材料だけで、家をまるごと1軒建てることができるのです。

 

 

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Photos by Sweet Potato..

一人暮らし世帯のアイランド型キッチン。ダイニングも隣接させ、洗面、トイレ、浴室などの水回りも近くした。アイランドキッチンの場合は、お客として訪問しても、みんなでワイワイ一緒に料理も片づけもできるのがメリット。


 

 

 

 

等身大のキッチンをどう考えるか

家族の人数、料理の嗜好や作業方法によって広さもかたちも変わってくるキッチン。

広い調理台があっても、スーパーで買ったお総菜をレンジで「チン」の回数が多ければ無駄な面積となります。

 

現実をしっかりと見据えることから、キッチンの構想はスタートします。

 

食器棚にしまってある食器の8割は、実は隠されてそこにあるだけ、ということも少なくありません。

だったら、最初から食器の数を絞りきって、食器棚は最小限の大きさでいいという考えもあります。

 

大型の冷蔵庫を置くスペースを考えたとしても、何割かはきっと賞味期限切れのマヨネーズやケチャップのたぐい。

小さ目の機種を選ぶと、キッチンの面積も小さ目にできます。

電気代も割安でしょう。

1坪削るだけで、数十万円になることを考えると、面積の節約はばかにできないのです。  

 

 

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キッチンの原点を突き詰めていく

我が家には電子レンジがありません。

家族みんなが、器にかけたラップやコンビニの弁当をあそこに入れて「どうして溶けたり、焼けたりしないんだろう」といまも不思議に思っています。

 

出張先でコンビニ弁当を買ってチンしてもらうことがありますが、あの不自然な熱さには、どうしてもなじめません。

おつきあいで入ったファミレス、居酒屋などでも、電子レンジで温めた料理や飲み物はすぐにわかります。

 

だから、どうしたこうした、こうすべきだという主義主張もなく、どこがどういうふうにまずいのかも説明できないのです。

が、ただ、なじめないという話です。

 

料理はどんどん簡略化されています。

お味噌汁のダシを煮干しや鰹節でとっているご家庭は、どのくらいあるでしょう。

コンソメスープも固形の調味料。

コーヒーはコーヒーメーカーで、ご飯は電気炊飯器。

パスタのソースはレトルトも当たり前。

 

かつて、どこにでもあった食品を貯蔵する場所も姿を消しつつあります。

システムキッチン、収納のあれこれについては論じられても、食品庫、貯蔵庫はなかなか話題にのぼりません。

 

お気に入りの味噌や米、手づくりの漬け物、ミカンやリンゴなどの果物、果実酒やワイン、季節の野菜、自家製の薫製などは、冷蔵庫より貯蔵庫のほうが保存に適していることが多いのです。

 

料理の本質に近づけば近づくほど、大型冷蔵庫や電子レンジ、オーブンなどより、昔ながらの設備が貴重であることがわかります。

 

キッチンや設備、家電製品を考える前に、食事の基本をいま一度考え直してみる。

考え方を整理するだけで、キッチンへの概念が変わってくるかもしれません。

 

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誰が、どんな時間帯に、どのくらいの時間、どんな内容の作業をするのかを緻密に分析して、無駄をなくす。機能面だけではなく、「眺望」なども考えると、素敵なキッチンになる。

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自分にやさしいキッチンの姿とは

子どもが独立した50代以降の世帯では、既成の概念ではなく、人数はもちろん、自分の動作や作業力を配慮した設計や設備に投資した方が、現実的な場合もあります。

 

リビングの一部にキッチンを突き出すかたちのアイランド型キッチンも面白いですし、自分の身長や使い勝手にジャストフィットさせた造り付けの棚や収納、キッチンにこだわるのも素敵です。

 

 IHクッキングヒーターやオーブン、食器洗い機、生ゴミ処理機など、いわゆる設備に重点を置く考え方もあります。 

 

アメリカやドイツでは、食器洗い機は5割前後の普及率ですが、日本ではここに来て、ようやく普及し始めたところ。

家族はそれぞれ食後の食器を機械に入れ、あとは乾燥まで機械任せ。

シンクに汚れた食器がゴチャっとなってさらされているわけではないので、1日分をまとめて夕食後に洗ってしまうこともできます。

こうした文化は洗濯でも同じで、以前、洗濯文化の違いについても、ここでふれました。

 

最近は、バイオの力で生ゴミを分散する生ゴミ処理機や生ゴミを乾燥させて圧縮する製品もあり、ゴミ処理の負担を軽減させる方に考え方をシフトすることもできます。

 

 IHクッキングヒーターは火事の不安が軽減され、ケーキづくりが好きな人には、思いきってオーブンにお金をかけるのもいいでしょう。

 

設備の種類を把握してから、あるいは設備そのものの必要性を熟慮してからキッチンの種類や形状、キッチンそのものの広さを考える発想もあります。

ほんとうは、生ごみ処理の機械より、生ごみを出さない、あるいはリサイクルする生活を考えることが大事なことはいうまでもありまん。

 

家もキッチンも同じ。

テレビや雑誌で見た規格、流行のスタイルに合わせて暮らそうと考えるのではなく、自分の家族の嗜好、家事をする人の身長、使い勝手、料理の好みなどに合わせ、システムじゃないところから考えていくことが基本なのです。

 

システムキッチン、対面キッチンを否定するのではありません。

「自分らしさ、考えていますか?」というお話です。

 

 

まとめ

 1.キッチンは大別してオープン型と独立型の2タイプ。キッチンの種類・タイプを知って、家族の生活スタイルにどれが合うかを話し合う。流行だから、モデルルームにあったからといった理由だけでは選ばないこと。

 

2.家族の生活スタイル、調理方法、食器や冷蔵庫のタイプによって、キッチンそのものの面積から検討する。住宅は1坪数十万円の単価となるだけに、キッチンでも0.5坪、1坪の削減ができないかどうかを根本から計画したい。

 

3.家具量販店などでも、専門メーカーの半額以下でシステムキッチンを販売しているので選択肢となる。MUJI×URのリノベーションプランも参考になる。

 

4.ビルダー、大工さんに構想を伝えて、既成のシンクや棚と組み合わせて造り付けのキッチンも検討したい。メーカー製よりは安くでき、修繕の際にも、必要な部分のみを直すだけでいいためメンテナンスコストも割安。

 

おすすめの本
 

 いい女、いい男、というのは、素敵な生き方をしている人のことをいうのかもしれません。女であることを不利にも武器にもせずに生きた著者の、料理から見えてくる潔い生き方は、素敵というより、カッコいいとしかいえません。