Where we belong.=【家を知る・家に住む・この家で生きる】

そして、私たちの「居場所」について。

壁内・床下など「見えない部分」にまで気を配った「安心リフォーム」の基本。

 

 

 

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新築でもリフォームでも、完成後に見えなくなって隠れてしまう部分、つまり、壁のなかや床下、天井裏などの施工がもっとも大事です。見えない箇所をおざなりにしたまま、目に見える部分だけをきれいにしても、じわじわと内側から結露やカビが出てきて、やがて構造材を腐朽させてしまいます。温度、湿度、空気など大事なことは目に見えません。前回の断熱の話と共通する部分もありますが、安心リフォームの基本をまとめてみました。

 

Contents.

 

百年単位で住み継がれるヨーロッパの住宅

ヨーロッパを旅すると、古い建物がたくさん残っていることに気づきます。大半はいまも現役で、住宅や店舗、オフィスなどとして利用されているのです。

 

ヨーロッパの街を歩くと、住民たちが600-700年も前の建物を自分で手直ししながら住み継いでいることに改めて感心します。

 

ロンドン在住の友人は、250年以上前の住宅を改修して住んでいます。

日本でこの時代の建物が残っていたとすれば文化財級ですが、ヨーロッパでは珍しいことではありません。

 

外観はほとんどそのままですが、断熱材や窓、暖房設備などは入れ替え、家のなかは真冬でも、どの空間も同じ温度に保たれます。

暖房は温水暖房です。

 

ビルダーのスケジュール管理のアバウトさに苦労したといいますが、住民からビルダー、設備屋さんまで、古い建物は壊さず、自分たちの次の世代まで残していく意識が徹底していることに驚いたと話します。

 

日本では考えられないことですが、一生涯、新築を手がけることのないビルダーや建築士がたくさんいるのです。

 

ちなみに、アメリカの住宅の平均寿命は約44年、イギリスが約75年、日本のは約26年(国土交通省 1996年)。

日本で中古住宅が占める割合は36.7%(国土交通省 2012年)。同時期のフランスで66.4%、イギリス88.8%と比較しても、圧倒的に少ないことがわかります。

 

この数字で判断しますと、日本では住宅を次代に受け継ぐことは不可能で、親の世代で1軒、子の世代で1軒、孫の世代で1軒と、世代ごとに建て替えなければならないことになります。

先代から孫子の代まで住宅ローンでに縛られながら暮らしていくしかできないのが日本の悲しい実情なのです。

 


吹き抜けイメージ

 

リフォームを重ねて行きつく先は「新築」

日本で中古住宅のシェアが低い理由の一つに、日本人の「新築信仰」の高さの表れが挙げられます。

 

「住宅市場動向調査」(国土交通省 2013年)によれば、分譲住宅購入時に「中古住宅にしなかった理由」として最も多かったのが「新築の方が気持ち良いから(75%)」。

 

日本の住宅の平均寿命(建て替えサイクル)が短いこともあるのですが、時代を超えて住宅を住み継いでいく意識が足りないことが数字にも表れています。

 

しかし「新築の方が気持ち良いから」の裏側にあるのは、これ以上「住むことが難しいほどの状態」ではないでしょうか。

築後15年を過ぎたあたりから、増改築を含むリフォームが多くなります。

 

我が家もそうでした。

 

この時期に多いのは、雨樋・外壁などの塗装・屋根の傷み・段差の解消・手すりの設置、浴室・トイレ・キッチンなどの設備の更新、内装材の張り替えなど。

いわゆる水回りのトラブルが多くなります。

 

我が家の場合は、屋根や外壁が傷んで塗装が剥げ、水道管が一部で破損し、トイレやお風呂で水漏れが起きるなどで悩まされました。

 

ある時期から、2階の窓周りからは、羽アリが出るようになりました。

ちょうど夏のはじめのころで、ひどいときには、ゴマをばらまいたかのように、窓にびっしりと羽アリがくっついていて悲鳴を上げたこともあります。

 

周辺の壁を剥がしてわかったことは、窓の周囲に断熱材が入っておらず、壁内で生じた極端な温度差によって生じた結露が断熱材に水分を含ませ、その水分が構造材を腐らせ、傷んだ箇所から入り込んできたアリの巣になったのです。

 

こうした現象を「断熱欠損」といいます。

 

シロアリを心配しましたが、調査の結果、その要因はありませんでした。

いずれも「水」が原因だったのです。

 

いくらリフォームを繰り返しても、その行く末は建て替え=新築いうのが日本の現状です。

何度となくリフォームを繰り返し、建て替えまでに費やした金額は数百万円から1千万円以上となり、これまでの出費は、いったい何のためだったのかと後悔する施主に何人お会いしたかわかりません。

 

 

 

 

 

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断熱施工で実績のあるビルダーを選ぶ

あまり知られていないことですが、現時点では、500万円未満のリフォーム工事については、建設業許可が不要です。

構造のことはおろか、温熱環境についても素人同然の業者が工事を請け負うケースもままあり、悪質リフォームについての報道があとを絶たないのは周知の通りです。

 

設備の更新や壁紙の張り替え程度のリフォームであれば、問題が少ないかもしれませんが、結露被害や寒さ・暑さ・省エネなど、温熱環境の改善工事については、新築でも断熱・気密などの専門知識を有している会社や建築士が安心です。

 

壁の表面になぜカビが多いのか、この床はなぜ歪んでいるか、窓からのコールドドラフトは、空気が澱んでいるのは――

といった部分にまで配慮が行き届くかどうか。

 

熱や空気の質は、目に見えないものだけに、建築学とはまた違う分野の知識や技術が求められ、その分野での実績が選択の目安となるのです。

見た目をきれいにするだけの施工業者では、熱と湿気のコントロールが難しい場合が少なくありません。

 

現在は、壁内の温度分布を見る熱カメラも安くなり、スマホのアプリでも簡易版が入手できます。

素人でも簡単に壁のなかの断熱材の状態、どこに隙間風の入り口があるかなど断熱欠損が発見できますので、試してみるのもいいでしょう。

 

経年変化や地震による影響もありますが、先にも述べたように、日本の住宅がこれまで短い寿命だったのは結露、すなわち「水」が大きく影響しています。

目に見える部分に結露があり、カビが確認できる場合は、すでに壁内も天井裏、床下なども同じ状態にあることが多いのです。

前回、ここで書いたとおりです。

 

リフォームなどで解体する現場あったら確認できますが、壁や床や天井を剥がすと、真っ黒になった断熱材や構造材が見えてきます。全て「水」に痛めつけられてきた結果です。

 

では、古民家や古い神社、お寺などは、どうして何百年も残っているのかという疑問が浮かびます。

 

結論からいえば、屋内と屋外の温度差がない、いわゆるスカスカの構造は躯体を乾燥させ「水」とはほぼ無縁の状態に置かれます。

 

釘や金物を使わない仕口、組み手などの日本の在来工法は、地震のたびに結合部分を強く結び付け、それが乾燥状態に長く置かれることで、躯体はさらに頑強になるという仕組みです。

 

途中で何度か改修の手を入れたとはいえ、法隆寺が1300年も維持されてきたのは、躯体を常に乾燥させる状態に置く熱力学が貢献してきたともいえましょう。

 

とはいえ、日本の家がこんなに短命になったのは戦後になってからのことで、中途半端な断熱・気密化が大きな原因とされます。反対に、欧米の住宅は伝統的に石造りが多く腐朽しにくこともありますが、暖炉などよって全館・連続暖房の文化があり、結露を呼び寄せません。

 

日本では戦後、構造学がメインで、熱や湿気に関連する物理学=熱力学の視座が欠けたままの木造住宅が普及したことは、日本の住宅史のなかでの一つの悲劇といってもいいのではないでしょうか。

 

 

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新築でもリフォームでもない「断熱改修」

寒さや暑さ、耐震・省エネルギー性にまで配慮したリフォームは「断熱改修」や「断熱リフォーム」と呼ばれます。

 

本来であれば、いったんスケルトンにして再生を試みるのが理想ですが、そうなると工事も大規模となります。

予算に限りがある場合は内装・建具は多少古いままでも、構造体に費用を多めに配分します。

 

このレベルになるとリフォーム会社の領域ではなく、建築を熟知した工務店や設計事務所でないと逆にリスクが高まると考えてもいいでしょう。

 

断熱改修は、リフォームと新築との間に位置する第三の選択肢です。

既存の家を素材にした注文建築ということもでき、リノベーション(住宅再生)の一つといってもいいかもしれません。

 

断熱・気密などの性能のみならず、耐震性の向上にまで目を向けることが可能となり、建物の劣化状況や間取りの変更の有無によって予算や施工程度、手法も異なります。 

 

断熱改修では、リフォームよりも確実に耐久性と快適さ、高い省エネ性能を得ることが可能ですが、優先順位は熱欠損の多い順から以下のように考えます。

 

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※出典・資源エネルギー庁
 

 

1.窓・ドア

内窓の設置が最も手軽で効果的な方法です。工事も1カ所につき半日もかからず、寝室やリビングなど、場所を決めて、その部屋の窓だけ工事ができるのもメリット。サッシが樹脂サッシなどの場合は、ガラスだけを断熱効果の高い真空ガラスに取り換えることもできます。

こちらも取り付けは短時間。この際、サッシがアルミの場合は、ガラスの断熱性がサッシを上回ることもあり、結露がサッシに集中することも考えられます。サッシの素材、性能、傷みなどを考慮しながら検討することをおすすめします。

もう少し予算のある場合は、窓やドアをまるごと最新製品に交換します。樹脂サッシ+ペア(あるいはトリプル)ガラス、断熱効果の高いLow-Eガラスやアルゴンガス充填など、性能の高い窓がラインナップされています。

 

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開口部全てを古いサッシから樹脂サッシ(複層もしくは3層ガラス)に交換するだけでもコールドドラフト(冷輻射)がなくなり、省エネ効果も実感できる。

 

 

2.床

昔の住宅の多くは、床下が地面となっており、床面に断熱材がない場合は、そのまま地面からの湿気や底冷えを感じてしまいます。

床材が傷んでいない場合は、床下からマット状やボード状、吹き付けできる断熱材を選んで施工します。

床が寒い、冷たいからといって床暖房を考えるのではなく、断熱施工が先で設備はあと。冷え続ける床を暖房設備で暖めても、エネルギーコストは高くなるだけなのです。

理想的なのは、床材の改修と同時に断熱材を施工することですが、このあたりは構造材の傷みを判断して決めることになります。

 

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古い床を剥がし、基礎面を基礎断熱にするか、床面を断熱化すると底冷え感が解消。断熱材には繊維状のもの、ボード状のものなど種類があるが、床下に潜り込める場合は、吹き付け状の断熱材もある。

 

3.天井・屋根

低い断熱性能しかない天井・屋根の場合、冬期は屋内の熱が逃げ、夏期は日中の日差しで温度が上昇。特に、夏場はその熱が朝までにじわじわと室内に放熱され、寝苦しさなどの原因ともなります。

断熱というと冬期の寒さ対策の印象が強いのですが、外の「熱」を「断つ」意味では暑さのきびしい夏期にも有効な手段です。

施工方法は、専用の機械で断熱材を吹き込むブローイング施工と、床の断熱でも使用するマット状、ボード状の断熱材を敷き込む方法があります。後者は作業者が天井裏で作業をすることになり、強度が十分であることが条件です。

小屋裏に溜まった熱の移動を減らす意味では暑さは軽減され、室内の熱が逃げにくくなる冬期は暖房効果が高くなるのが実感できます。

 

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壁や床下と同様に天井裏も断熱することで、夏は暑さを防ぎ、冬は屋内からの熱の流出を防ぐ。天井裏の場合は、ブローイングなどで隙間のない施工が有効。

 

リフォームを重ねても無駄にしない決断

施工価格は、築年数、断熱・気密の程度、延床面積、窓やドアの数、各部位の傷み具合、腐朽の程は度、断熱性能のレベルによって大きく異なります。

 

ここでは、BEST3を取り上げましたが、壁面の断熱改修はもっとも工事の規模が大きくなることから、部分的な断熱改修として位置づけることはできません。最低でも居間や寝室など部屋単位での改修を前提にすべきでしょう。

 

壁面を含む場合は、構造体全体の断熱改修を行うべきで、その際は、改修やリフォームというより、リノベーションに近い工事になります。

 

最近流行のリノベーションですが、構造から抜本的に改修するのはまだいい方で、見た目だけを更新する化粧直し程度でリノベーションの名称を使うケースも多く見かけます。

正式な定義はないものの、欧米での「リノベーション」は、少なくとも暑さや寒さのバリアまでも解消するレベルのものであることを覚えておきたいものです。

 

古い建物を改修(リノベーション)することに一生を費やす。このことは、日本と欧米の建物に対する意識を決定づける事実の一つでもあります。

古くなった、使いづらくなったから、そこらのモノと同じように、家が壊されていくのはさびしい話です。

 

建て替え=新築は最後の手段。

構造体が傷んだまま、目に見える部分だけの化粧直し的なリフォームを繰り返すのではなく、基本性能から家の現状、未来を眺める視座を持ちたいものです。

 

現在の建築技術では、築200年の住宅でも外観のイメージを大きく損なうことなく、快適性・省エネ性を向上した「断熱改修」が可能です。

繰り返しますが、新築でも、そうした実績の多いビルダーが選択肢に入ります。

 

 

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まとめ

1.家は住み継ぐもの。子どもや孫の世代にはローンを負わせない、そうした強い覚悟で家づくりやリフォーム、リノベーションに臨む。

 

2.壁内、床下、天井裏など「目には見えない」部分がどのような状態になっているかを確認する。そうした部位の腐朽原因を放置したまま、目に見える部分だけのリフォームをしても、数年後のは結露などの問題が発生し、近い将来、全面的な建て替えに結び付いてしまうことが少なくない。「これまでのリフォームは何だったのか」という後悔のない工事となるよう「目には見えない」ところのリフォームを徹底する。

 

3.壁や床、屋根を剥がすなど躯体に手をつける場合は、断熱・気密施工で実績のある施工者を選ぶ。可能であれば、Ua値(外皮平均熱貫流率=どれくらい熱量が家の外に逃げやすいのかを示す数値)、C値(隙間相当面積=どれくらい家に隙間があるのかを表わす数値=実測できる)を示すことのできる施工業者がベスト。また、こうした大規模工事の場合は、同時に耐震改修も行う。

 

4.予算などの都合で建物全体の断熱改修が難しい場合は、①窓②床③天井・屋根の順番で部位ごとの改修を考える。窓1枚にも断熱性能があるので、性能面での確認を怠らない。この際、居間1室など、部分的な断熱改修をすることで近接した居室との温度差が顕著になり、結露が逆に増えることもある。バランスをとった温熱環境とするため、断熱・気密・換気など温熱環境に精通した業者と慎重な検討をしたい。

 

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最後までお読みくださり、ありがとうございました。この記事は過去に掲載したものを大幅に加筆訂正し、再掲載しています。