Where we belong.=【家を知る・家に住む・この家で生きる】

そして、私たちの「居場所」について。

イライラ・カリカリ ・ピリピリしない家。

 

 

 

Photos by Sweet Potato..


ワンワン、ニャーニャー、ざあざあ、イライラ、カリカリ…などの擬音語や擬態語をオノマトペといいます。外国の方々が、日本語を学ぶ際に苦労するのも、このオノマトペ。感覚的なものが多いのですが、正式な日本語に直すとかえって通じないこともありそうです。家づくりの際のイメージ伝達手段としては、さて、使えるかどうか。

 

 

オノマトペは「古事記」の時代から

日本最古の文献「古事記」では、イザナギ、イザナミが日本列島をつくる際に矛で海をかき回す音を「こをろこをろ」と書いています。

 

うらうらに照れる春日にひばりあがり

 

万葉集にある句ですが、こんなに文学的な作品に、鼻水をすする音「びしびし」も収録されていて、短い言葉をリフレインする表現がかなり古くから使われてきたことがわかります。

 

私たちは、お天気に関することでも「からっとした日」とか「からりと晴れた」とか「どんより曇った」「ぽかぽか陽気」「むしむしする日」など、いろんな言葉を使います。

 

風が吹く様子も「ひゅうひゅう」と「ぴゅうぴゅう」ではニュアンスが違いますし「びゅうびゅう」となるとかなり強い風と認識できます。

 

こうした、ものごとや人の様子を表す言葉を「擬態語」、風が「ひゅうひゅう」吹く、ネコが「ニャンニャン」と鳴くなど、音や声を表す言葉を「擬音語(擬声語)」といい、このような言葉をまとめて「オノマトペ」[(フランス) onomatopée]といいます。

 

 

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言葉にできないニュアンス

日本語の「オノマトペ」は、外国語に訳すときには大変だろうなといつも思います。

 

光に関することだけでもぎらぎら、あかあか、ちらちら、きらきら、ほのぼの、しらじら…などたくさんの擬態語があります。

 

ちかちか光る、ちらちら揺れる、ぎらぎら輝くなど、学校で正式に習った覚えはないものの、アタマのなかでその光景や温湿度まで想像できてしまうから不思議です。

 

自然現象に関することのほかにも、たくさんあります。

例えば、人の性格に関すること――。

 

あっさり

おっとり

さっぱり

からっと

さらりと

のんびり

はきはき

…などは1日のうちで何度使うでしょう。

 

気持ちを表すものも多くあります。

イライラ

カリカリ

ピリピリ

むかむか

むずむず

ぶつぶつ

ぶすっと

むすっと

がっくり

ぐったり

げんなり

くたくた

へとへと

 

こちらも数分おきに使うほど使用頻度の高い言葉です。

今日の気分はどれに当てはまりますか。

 

これらは最大級の抽象表現ではありますが、どんなに難しい言葉を使っても表現できないディテールまで感じ取れるところが「オノマトペ」のすごいところです。

 

 

 

 

 

 

 

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思い出すのは「風の又三郎」の「どう」

オノマトペですぐに思い出すのが、宮沢賢治の作品の中で使われる言葉です。

最も好きな作品「貝の火」から抜き書きしてみますと――

 

子兎のホモイは、悦んでぴんぴん踊りながら申しました。

 

風が来たので鈴蘭は、葉や花を互いにぶっつけて、しゃりんしゃりんと鳴りました。

ホモイはもううれしくて、息もつかずにぴょんぴょん 草の上をかけ出しました。

 

それからホモイはちょっと立ちどまって、腕を組んでほくほくしながら、「まるで僕は川の波の上で芸当をしているようだぞ」と言いました。

 

本当にホモイは、いつか小さな流れの岸まで来ておりました。

そこには冷たい水がこぼんこぼんと音をたて、底の砂がピカピカ光っています。

 

 

目を閉じてページを開くだけで、どのページにも必ずいくつかのオノマトペが使われています。 

もう一つ、「風の又三郎」で思い出すのは、何といっても「どう」に代表される躍動的な言葉の数々です。

 

さわやかな九月一日の朝でした。青ぞらで風がどうと鳴り、日光は運動場いっぱいでした。

 

先生が玄関から出て来たのです。

先生はぴかぴか光る呼び子を右手にもって、もう集まれのしたくをしているのでしたが、 そのすぐうしろから、さっきの赤い髪の子が、まるで権現さまの尾っぱ持ちのようにすまし込んで、 白いシャッポをかぶって、先生についてすぱすぱとあるいて来たのです。

 

「みなさん。お早う。どなたも元気ですね。では並んで。」

先生は呼び子をビルルと吹きました。それはすぐ谷の向こうの山へひびいてまたビルルルと低く戻ってきました。

 

 

これらの言葉は日常でほとんど使うことはありません。

だからこそ、物語の世界をより幻想的にしながら、その世界でのリアリティーを顕著にします。

そして、言葉から発散されたエネルギーが、いつまでも余韻となって読み手の記憶に残ることにも感心します。

 

 

 

 

 

困ることもあった被災地の言葉

東日本大震災のあと、全国から被災地に入った救援の方々やドクターは、被災地特有の方言や「オノマトペ」に、かなり悩まされたという話を聞いたことがあります。

 

「まなぐぁ つぃさつぃさって わがんねぁ」(目がちらちらしていけない)といわれても、まったく理解できないのです。

 

「まなぐ」(眼)

「わがんねぁ」(よくない だめだ)

といった方言だけでもわからないのに「つぃさつぃさって」などは、さぞかし困ったことでしょう。

ちらちらして、という言葉も抽象的ですが、何となくわかってしまうのも、オノマトペのすごいところです。

 

「東北地方の被災地で活動される医療機関の方々が地元の方言を理解するときの手助けになるようなものがほしい」

との要望に応えるたちで『東北方言オノマトペ用例集』(国立国語研究所)という冊子が編まれたほどといいますから、苦労されたことが想像されます。

 

 

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スッポンポンで歩ける家

いくら具体的に表現しよう思っても「がっくり」は「がっくり」ですし、嫌いな上司に文句の一つもいわれたときには「むかむか」します。

 

水をごくごく飲むときの「ごくごく」をきちんと状況説明せよといわれても難しいように、私たちの日常ではすでに「オノマトペ」が身体的、感覚的に使用されているのです。

 

オノマトペの一部は、ある程度英訳もできます。 

 

ブツブツ(不平) grumble

ニタニタ(笑う) grin

むかむか(怒っている) disgusted

だらだら(決心がつかない) dillydally

イライラ(落ち着かない) irritated、frustrated

ドキドキ(心臓が鼓動) heart beating

ワクワク(気持ちが高ぶっている) excited

ぶらぶら(とりとめない様子) ramble

 

ちょっと調べるだけでも、意外になんとかなるものだと改めて感心してしまいます。

 

海外旅行の際は「しくしく痛む」「ピリピリ痛む」などのニュアンスを伝えることが大事です。

特に頭痛などの持病のある人は常にメモをしておくことを忘れたくないものです。

ちょっと紹介するだけでも――

 

ズキズキする throbbing

ちくっと pricking

しくしくする nagging

ガンガンする pounding

キューッとする squeezing

ぴりぴり tingling

 

といった表現があり、「電気が走るような痛み」「さすような痛さ」などたくさんの言葉あることに驚きます。

 

 

感覚を最優先する家づくり

家づくりに際しても、具体的な要望をうまく言葉にできないときなど、設計の担当者に「オノマトペ」シリーズで臨むという方法もあります。

 

だらだらできるリビング

ゾクゾクするような寝室

スカっとした外観

ボケっとできる縁側

帰宅すると、ほっとする玄関 …などなど。

 

こうした「オノマトペ」を200~500準備すると、設計者にとっても参考になり、かなり具体的なプランができそうです。

 

「日曜日の午後はマッタリ、のらりくらり過ごせる和室」「はんなりできる照明」など、感覚的な言葉で伝えることも大事なことです。

 

つきあいの長いカメラマンのA子さん(既婚)は、家づくりの際に「家族に見えないように、スッポンポンで家中歩ける裏動線」を真っ先にオーダーしました。

実現できたかどうか、今度確かめてみようと思っています。

 

 ※

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。コメントを頂戴した方にも、感謝いたします。

 

 

 

 

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