Where we belong.=【家を知る・家に住む・この家で生きる】

そして、私たちの「居場所」について。

横書き・縦書き・家づくり、それぞれの違和感。

 

 

 

Photos by Sweet Potato..

 

漢字もひらがな、カタカナも、もとはといえば縦書きで記されることを前提にデザインされた文字です。しかし、このブログがそうであるように、いまや日本人の誰もが横書きでメッセージを表わしている時代。日本語、編集の原点を辿ると、家づくりにも意外なことが見えてきます。

 

Contents

 

 

ずっと横書きを避けてきた理由

この文章は横書きです。

右から左に読むように書いています。

横書きだと、これしか書きようがありません。

 

しかし、仕事では資料集などを除き、横書きの出版物は、ほとんどつくったことがありません。

つくらないようにしてきた、ともいえます。

 

理由は二つあります。

一つ目は、日本語はもともと縦に読むようにデザインされた文字であること。

つまり横書きには、本来適さない文字であるということです。

複数のエディトリアルデザイナーと何度も検討を重ねた末に得た結論でもあります。

 

二つ目は、自分自身が横書きの文章を読むのに疲れること。

日本語の起源がそうだからというわけではなく、自分の感覚に忠実に仕事をしていることになります。

早い話、読むのに疲れる文字組を、わざわざ印刷コストをかけて読み手に渡すわけにはいきません。

 

これまで手掛けた本の大半は縦書きですので、ページを右にめくっていくような動作になります。

 

小説などの新刊、雑誌はいまでもほとんどがこの形式です。

大半の日本人が、このフォーマットになら、違和感を覚えないからです。

 

雑誌の中でも、パソコンやカメラの専門誌は横書きで左に向かってページをめくるものが多くを占めます。

 

図表や写真、数字、記号が多い場合は横書きのほうがレイアウトをしやすく、編集が容易なのです。

編集デザインも、何といっても、横組みは楽です。

 

なかには本文の句読点まで「。」や「、」を使わず、英語のピリオド「.」やコンマ「,」を使うケースもあり、論文などではこのタイプが主流を占めます。

これは編集を仕事にする者にとっては、天地がひっくり返るほど、戸惑ってしまうことでもありました。

 

私がこの世界に入った頃は12345円という数字も一万二千三百四十五円と表記しました。

横書きですと、算用数字が読みやすいことがわかります。

 

以前、行政の広報誌を担当したとき、私たちは縦書きにこだわり、担当者を説得して発刊以来初となる縦書きの広報誌にしたことがありました。

 

契約の更新時期を経て、業者が変わったときには横書きに戻されましたが、縦書きの広報誌は全国でも珍しく、高い評価を得ていただけに残念です。

 

   

 

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墨で悪口を書くと千年残る

古代中国では、当然、縦書きしかありませんでした。

まだ紙のない時代、墨で書かれていたのは竹です。

 

その竹を細長く割って作った簡を竹簡(ちくかん)といいます。

竹は空に向かって伸びるのが樹木ですので、それに横書きをするといった発想にはならなかったのでしょう。

 

竹ではなく、木の簡でつくったものが「木簡」。

時折、遺跡から「木簡」が出土しというたニュースを聞くことがありますが、数百年以上も前の文字が紙ではなく、木に書かれていたからこそ、かろうじて残ってきたともいえます。

 

簡をバラバラにならないよう紐で編むことを「書を編む、編集」といいます。

編まれた簡が「一編の書」、編まれた書を巻いたものが「一巻の書」。

本を編集する「編集」という言葉は、この木簡に原点があることがわかります。

 

墨は数百年、千年以上経っても消えませんので、悪口は墨で書くのは避けるべきです。

 

縦書き、横書き、句読点や記号、算用数字などが混在し、出版・編集の現場も揺れています。

 

確かに、熱損失係数の「W/m2・K」などの記号はもともと西洋の文字を使いますので、縦書きにすると違和感があります。

縦組みの場合、こうした記号や単位はそのまま横に倒して表記します。

 

日本語の横書きはいまに始まったものではなく、江戸時代に蘭学の流行などの影響を受け、洋書を真似た横書きがすでに発生していたといわれます。

編集の現場も読み手も混乱したはずですが、その混乱が、いまも続いているのです。

 

 

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段落や数字の表記はどうするか

新聞では数字のほとんどを算用数字の表記に変えました。

以前は「一枚」だったのですが、いまでは縦書きにもかかわらず「1枚」と書きます。

じゃあ、「一人」の場合は「1人」かというと難しいところです。

 

「ひとり」と読むのに「1人」ではやはり、違和感を覚えます。

新聞表記の場合、「一人旅」などの慣用句は「一人」を使い、「1人だけが助かる」など数を示す場合は「1人」が使われます(「記者ハンドブック」共同通信社)。

 

出版社では各社で独自のマニュアルをつくって、編集しているのが現状なのです。

 

また、ここに書いている文章には、段落がついていません。

文頭を一文字空けていないのです。

このことにも実は抵抗がありますが、横書きの場合、段落をつけてしまうと、逆に読みにくくなるので、しょうがありません。

 

では、取材のときのメモはと問われると、ノートは縦書き。

素早く言葉を書き留めるには、縦書きは適しません。

 

日本語はもともと、ゆっくりと丁寧に書かれることを前提にデザインされたと推測できます。

 

この世界に入って学んだことの多くが無意味に近くなっていて、ときどき、文字を創造し、伝えてきた先人たちに申し訳ない気持になります。

 

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横書きは縦書きに変換して認識される

お隣りの韓国や中国でも、縦書きから横書きへの移行が進んでいます。

東南アジア諸国も同様ですが、いずれも、英語などと同じく、左から右の横書きが主流です。

 

それに伴い、各国でも新聞や出版の世界が大混乱していることは想像に難くありません。

アラビア語、ヘブライ語などは右から左へと文字が綴られる右横書きなのは、おもしろいところです。

 

 

いまやパソコンもスマホもカタログも、いろんな分野で横書きが主流になりつつあります。

これは欧米化とか、伝統の消失といった問題とは少し性格が異なります。

 

推論ではありますが、横書きの日本語は縦書きに比べて、記憶されにくのではないかと思うことがあります。

 

横書きは、伝達に特化された手段であり、私たち日本人のDNAは、横書きの文章を読んでもアタマのなかでいったん縦書きに編集し、変換して読んでいるのではないでしょうか。

そんな気がしてならないのです。

 

   

 

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揺れて深めて視界をクリアにする

このことは、デジタル時計の数字を無意識でいったんアナログの針に変換し、時間を捉えることに似ています。

 

だからきっと、横書きは、無意識のレベルで疲れるのです。

記憶にも残りにくい。

 

同じことは、家づくりの現場にもいえそうです。

何かもかもが西洋式でも、全てが日本の伝統を踏まえたものでも、疲れてしまいます。

 

洋でも和でもない。

縦でも横でもない。

 

私たちは、そういう狭間で、黙っていると何も見えないようなポジションで、揺れながら生きています。

状況の変化に、私たちの無意識、思考回路やDNAが追い付いていけない、そんな感じでしょうか。

 

対処法は二つ。

 

一つは、両極にあるものを、それぞれ一歩、二歩、数歩と、もう少しだけ踏み込んで学んでみること。

学ぶことは、深めることでもあります。

すぐに結論を得たいところですが、結論が大事なのではなく、そこに至る過程で得ることのほうがもっと大事です。

 

以前、家づくりを学びたいのであれば、(自分だったら)家族を連れて、建築の先進地を旅をする、と書いたことがありました。

100万円かかったとしても、建築コストにすれば畳2枚分程度のこと。

それを削って旅をして得ることのほうが、天文学的な資産になります。

和=日本、洋=欧州でもアメリカでもオーストラリアでもかまいません。

いまよりも、3センチでも3メートルでも深めるのです。

 

もう一つは、感覚です。

それが、疲れるか、疲れないかを自分の五感で測るのです。

五感は「気」を感じるためのものでもあります。

 

人でもモノでも家具でも家電でも。

縦書きでも、横書きでも。

「気」の合わないものを選んでしまい、後悔することは少なくありません。

 

違和感は危険を察知する際、発動される原初的な感覚。

とすれば、この横書きも、何らかの危険を孕んでいるといえそうです。

 

こうしたプロセスを大事にすることで、世界が従来とは違った輪郭を持って見え始めます。

揺れることを畏れてはなりません。

安易に情報に頼ることも、ときに現実から私たちを遠ざけます。

 

揺れながら、次第に視界はクリアになり、ある日突然、譲れない何かが自分の中に芽生えてきます。

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。コメントを頂戴した方にも、感謝いたします。

 

 

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