Where we belong.=【家を知る・家に住む・この家で生きる】

そして、私たちの「居場所」について。

漆器、日常使いの贅沢。

 

 

 

Photos by Sweet Potato..

 

英語で「japan」と訳される日本の伝統工芸品「漆」。世界から垂涎の的とされる漆の器を日常使いにする歓びは、ひとしおです。伝統の「用と美」を創る職人の世界。

 

木地師と塗師の手業

漆を塗った器を漆器といいます。

その漆器を作る職人さんの話をうかがったことがあります。

 

日本の漆は世界的にも名高く「漆」のことを英語でjapan(ジャパン)というほど。

歴史は古く、国内では原始時代のものまで発見されています。

 

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はじめは接着剤として使われていたようですが、7世紀以後、中国の技術が導入されてからは、箱・食器、そのほかの家具・仏像・建築などの美術工芸品にも用いられるようになりました。

産地としては、岩手県浄法寺が有名で、いまも国産漆の6割を占めています。

 

1年で1本の木から採取できる漆は、茶碗一杯程度。

樹液は木によって、あるいは天候、日照時間によっても量、質が異なり、丁寧に水分を除くことで、飴色の塗料となります。

 

 

 

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漆器は木地師・塗師(ぬし)など、分業によって作られます。

木地師はその地の植生を熟知し、「えぐり」や「ろくろ」で器を成型するのが仕事です。

素材が豊富な場所、技術の高い鍛冶を求めて地方を移動し、木地挽きをして生計を立てます。

 

木地の仕上がりは、カンナの切れ味で左右されますので、鍛冶との出会い、相性も重要でした。

 

幕末には、東北から九州まで7000戸ほどの木地師がおり、 明治中期までは美濃を中心に全国各地で木地師たちが良質な材木を求め、20〜30年単位で山中を転々としていたとされます。

 

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「塗師」は文字通り、漆細工・漆器製造の職人さん。

恥かしい話ですが、当日まで、「ぬし」と読むことさえ知りませんでした。

居を移す木地師とは異なり、塗師の多くは定住型です。

 

作業工程を拝見します。

 

顔料を混ぜた漆を和紙で漉し、0.02ミリの薄さで木地に塗りこめます。

それを7回繰り返します。

それでも0.02ミリ×7回=0.14ミリの厚さにしかなりません。

 

凹凸などもってのほか。

均一に、なめらかに、塗っては乾かし、乾かしては塗る。

その作業を繰り返します。

 

何十何百という器を同じ仕様にする手わざは、まさに神わざ。

工業製品が見本にしてほしいほどの精巧さです。

 

樹齢何十年もの木を木地師が成形し、それを漆で塗って、一つの作品に仕上げていく。

数えきれない工程を経た器を、ふだん使いにするのは、このうえない贅沢ともいえます。

 

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一生ものの器と暮らす

漆器は、どこかが剥げたり、欠けたりしても、あとで修復できます。

いったん入手した漆器は一生ものなのです。

 

使用後は柔らかいスポンジと薄めた中性洗剤で洗うだけ。

自然乾燥が基本です。

使うほどに艶が増し、食手にするたびに愛着が湧いてきます。

 

お椀一つでも、1万円から数万円と値は張ります。

しかし、仮に1万円の器を50年使うとして、365日×50年=18250日、1万円÷18250日で計算すると、ただに近いような金額。 

 

お子さんからお孫さんへと、ふだん使いの器を受け継いでいけることも、漆器なら可能です。

数十万、数百万の家具を受け継いでいく文化も素敵ですが、なかなか手がでないのも現実。

身近なところで、器を継承することならできそうです。

 

 

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丁寧に使い続けるなら、「何百年でももつ」といいます。

職人さんのいうことなので、間違いはありません。

 

漆器を日常使いにすることは、案外、贅沢なことではないかも、と思えてきます。

 

家の性能や構造、設備、インテリアのあれこれを真剣に考える人が増えてきました。

インテリアや家具に予算を割くことも素晴らしいですが、日々欠かすことのできない器にこだわる人は、多くありません。

日常使いのモノに本物を使うことこそ、ほんとうの贅沢です。

 

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少し高い買物でしたが、家族の数だけその場で漆器を買い求めました。

 

そっと手にとります。

器にふれた掌の皮膚の部分だけが、漆に吸い付いていくのがわかります。

皮膚と塗面との間にできた魔法です。

 

回しながら眺めてみます。

谷崎潤一郎は羊羹について、「日の光を吸い取って」「暗黒が一箇の甘い塊になって」などと書いていますが、漆の深い塗りにも、同じことを感じます。

光が吸い込まれていくのです。

 

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もう一つ。

心地よい、重さ。

形状のみならず、重量までもデザインされていることに初めて気づきます。

 

食器棚の奥からも、以前、骨董屋さんで購入した藩政時代の漆器も引っ張り出し、日常使いとすることにしました。

この骨董漆器も、一椀4000円もしたのです。

200年も前の食器が私たちの眼の前にあるだけで、奇跡を感じます。

 

ほんものと呼べるものから、毎日、使っていこうね。

家族みんなで、そう決めました。

 

骨董屋さんで買った器は、わずかに欠けているところがありますが、塗師さんに修理してもらう予定です。

 

 

 

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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

コメントを頂戴した方にも、感謝いたします。