Where we belong.=【家を知る・家に住む・この家で生きる】

そして、私たちの「居場所」について。

【洗濯・乾燥】=室内で洗う、干す───文化と効能。

 

  

 

 

 

 Photos by Sweet Potato..

梅雨の時期から猛暑の夏、寒い冬の間、共働きの家族の場合など、外干しが難しい状況に置かれることは少なくありません。部屋干しするにはそれなりのスペースも必要です。でも、エアコンや扇風機などを上手に使えば、快適な洗濯&室内干しができるかもしれません。

 

Contents.

 

美しい外観と洗濯物のある風景

いつも通る道路沿いに新しく家が建つことになり、

完成まで毎日、建築工程を眺めていました。

ちょうど信号があり、よく止まる場所でもあります。

 

基礎は、構造は、断熱材は、窓は、

ドアは、外壁は…と現場の前を通るたび

変わっていく様子を見るのは、ちょっとした楽しみ。

 

完成後はこんなふうになっているといいなあと、

ある日から

自分のなかで賭けをすることにしました。

 

一つは、リビングのカーテンから漏れる

灯りが蛍光灯ではないこと。

もう一つは、南面の素敵なウッドデッキが

洗濯干場にならないこと。

この2つです。

 

完成となって、ある日の夕刻、

お宅の前を通りました。

カーテンの間から漏れてくる灯りは紛れもなくオレンジ色で、

間接照明を採用していることがわかりました。

 

しかし、通りに面したウッドデッキの

横っちょには物干し竿が設置され、ご家族の洗濯物が

陽が沈んんだあとも、ヒラヒラと風に揺れていました。

 

どんなに美しい外観としても、

日本人はいまだ洗濯物を家の正面、通りに面して

干すことにあまり躊躇しません。

 

女性の下着こそ見かけませんが、

子どもたちの下着やお父さんのパンツ、

シャツなどは気持ちよさそうに

お日様の光を浴びて、風に舞っています。

 

 

www.ienotomo.com

 

 

 

 

 

 

 

 

世界各国で異なる外干しの事情

以前、単独で取材に入った

フィリピン・マニラ、ネグロス島などのスラム街では、

延々と軒を連ねる粗末な小屋の外側に

真っ白な洗濯物が干され、

日々、その美しさに見とれたものでした。

 

フィリピンでは洗濯物は裏返しにして干すのが常識で、

縫い目を外側にして早く乾くようにします。

どの家でもロープでの干し方が均一で、

全体として見ると、

統一された景観を形成していて、

スラムであることを忘れるほどでした。

 

シンガポールの郊外では、

高層住宅が多いのですが、道路に唾を吐いたり、

ガムを捨てると罰金がとられる規律のなかでも、

整然とした町並みのなかでも外干しが目につきます。

団地の多くは物干し用のベランダが少ないため、

物干し竿を建物の壁から

直角に突き出して干す光景も珍しくありません。

 

香港、中国の住宅地でも窓から

竿が突き出しているのをよく見かけます。

お父さんのパンツも

お母さんのパンツも、一緒に仲良く干されています。

 

雑然とした街並みに雑然とした洗濯物が

風にたなびく光景は、

不思議なことに雑然さを感じさせず、

街と人のエネルギーを感じます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フィリピン・マニラのスラム街を取材。家は粗末だが生活は清潔。真っ白い洗濯物がどの家の軒先にもたなびいている。

 

 

 

 

 

 

 

 

先進国は室内干しに徹する文化

しかし、ところ変われば何とかで、

ヨーロッパやアメリカでは、いささか事情が違ってきます。

 

パリなど、フランスの都市部では

通路側に干すのは避けて室内、

あるいは建物の裏側に干します。

 

アパルトマンなどでは道路と反対側のベランダも、

欄干より高く干し物を出さないのが

常識になっているようです。

でも、田舎に行けば、日本のように、

ふつうに庭先に干していることは珍しくありません。

 

イギリスでも、基本は室内干し。

景観上の配慮もあるのでしょうが、

友人宅で聞いたときには、

天気がめまぐるしく変化するので、

安心して干せないとの理由でした。

 

イタリアやスペイン、

ポルトガルなどでも基本は室内干しです。

旧市街地や古くからの住宅地では、

狭い路地にロープを向こう側とこちら側に渡して、

洗濯物を干すこともあります。

古い映画のワンシーンを見ているようで、

不潔さなど感じることはありません。

ドイツ、スイスも室内干しが基本でした。

 

アメリカは大きな国なので

ひとくくりに語れないのですが、

我が家に半年間ホームステイしたデイビットさんによると、

「通りに面して洗濯物を干す日本人の感覚が信じられない」

と何度も話していたので、

そんな習慣はないと思われます。

 

彼はカリフォルニアの出身。

空気が乾燥しているところですが

「なぜ日本人は高温多湿なのに乾燥機を使わないのか」

と首をひねっていました。

 

景観を意識した嗜みや美的感覚もあるのでしょうが、

確かに、欧米では

日本に比べて空気が乾燥しており、

乾燥機がセットになったドラム式洗濯機が一般的です。

洗濯室が地下にあることも多く、

外に干す必要性がもとからなかったともいえます。

 

何より、欧米の住宅では集合住宅、

戸建てにかかわらず、

全日・全館暖房が当たり前。地下室がなくとも、

どこに干しても乾燥には時間がかからない

温熱環境の違いもあるでしょう。

 

 

www.ienotomo.com

 

Photos by Sweet Potato..

予算にゆとりがあれば【室内干し】を習慣にすることを前提にしたサニタリーを検討する。

 

 

 

 

 

 

 

室内干しにも意外なメリットが

せっかく素敵な外観をデザインしても、

家族の洗濯物を外干ししてしまう日本の家。

もっとも、外干しは古くからの日本の習慣、文化ですので、

善し悪しで片付けることはできません。

 

お日様に干した洗濯物も

お布団も気持ちのいいものですし、干すのだったら、

お日様のあたる南面に限ります。

 

その南面が通りに面している場合、

洗濯物には気を遣うという若い世代も増えてきました。

 

ドラム式洗濯機が普及してきたこと、

どこの家でもエアコンがあることも、

室内干しが増えてきた理由といえます。

 

北海道ではほとんどエアコンが普及していないため、

夏期の室内干しには苦労するという話を聞いたことがあります。

 

室内干しにも、メリットはあります。

以下にまとめます。

 

1.天気に影響されないこと。

共働き世帯であれば、天候の変化を気にせずに出かけられます。

 

2.花粉やホコリ、黄沙、PM2.5などが付着しないこと。

ベランダでも庭先でも、外干しをすると、

洗濯物にホコリや花粉が付着してしまいます。

洗い立てで濡れた状態の衣服に着きやすいのは当然。

黄砂やPM2.5の問題もあります。

PM2.5は繊維の奥まで入り込むので、部屋に取り込む際、

手で払うだけでは不十分。

人間の肺の奥まで入ってくる手強い物質ですので

健康上の問題も懸念されます。

 

3.衣類の変色を防ぐ。

お恥ずかしい話ですが、我が家でも乾燥機はめったに使わず、

外出しないときは、外干しが基本です。

しかし、交通量の多い場所では

クルマの排気ガスも衣服の変色の原因となり、

紫外線との相乗効果で傷みは早くなります。

お気に入りの衣服だからこそ、

室内干しがベストということになります。

 

 

www.ienotomo.com

 

Photos by Sweet Potato..

物干しを設置しサニタリー。乾燥しやすい畳敷きで素足にも快適。

 

 

 

 

 

 

 

梅雨の時期と冬のエアコン活用

梅雨の季節から真夏にかけての室内干しは、

湿度が一気に上がることから不快指数も上がります。

1回約5キロの洗濯物を干すと、蒸発する水分は約3リットル。

 

冬は窓を閉め切ることが多い反面

エアコンで暖房をしているご家庭では

乾燥が早くなります。

 

しかしながら

水蒸気が発散された室内ではカビが発生しやすく、

カビに付き物とされるダニも繁殖します。

結露が起きている場合は、

すでにカビの胞子が舞っている状態ともいえます。

 

こんなときには、エアコンを上手に活用します。

 

この季節は、冷房か除湿(ドライ)。

冷房は設定した温度まで室温を下げようとし、

除湿も行います。

しかし、設定温度が近くなればスロー運転となって、

除湿機能もスローになってしまいます。

温度優先ということです。

 

除湿(ドライ)運転は、除湿が目的ですので、

温度は下がりにくくても、除湿は続けられます。

室内に干した洗濯物は、

温度よりも湿度が低い環境が早く乾きますので、

エアコン使用時は、除湿(ドライ)運転が適切です。

 

この際の温度設定は外気温から7℃くらい

差し引いたくらいがいいと、

メーカーさんから聞いたことがあります。

天候により異なりますので、

自分なりにシュミレーションすることが大切です。

 

室内干しが終わった後は、

5~10分くらい窓を開けるなどして、

室内の空気を入れ替えます。

※第三種、第一種換気のある家でも、

窓を開放したほうが早いはずです。

 

エアコンの機種によっては、

除湿(ドライ)にも「弱冷房除湿」と「再熱除湿」があります。

 

前者は、冷やした空気を室内に戻すので

室温が下がります。

後者は冷やした空気を元の温度に温め直しますので、

あまり室温は下がらず、除湿だけを行います。

ただし、こちらは電気代が

少し余計にかかるデメリットがあります。

 

冬期など外気温が低い場合は、

冷房も除湿も効きにくくなりますので、

暖房が基本となります。

 

とはいえ、暖房だけでは水蒸気が室内に溜まりやすくなります。

エアコンの気流が洗濯物に当たる場所では、

それだけ早く乾燥しますが、

エアコンとの距離がある場合は、

扇風機やサーキュレーターを利用しています。

洗濯物に風を向けるだけ。

終日利用しても、電気代は驚くほど安く済みます。

また、気がついたときに

数分でも窓を開けると水蒸気も逃げます。

 

 

www.ienotomo.com

 

まとめ

 ●室内干しの利点

1.天気に影響されないこと。

2.花粉やホコリ、黄沙、PM2.5などが付着しないこと。

3.衣類の変色を防ぐ。

冬は暖房+扇風機+気のついたときに窓を開けて空気の入れ替えでOK!

 

 

●補遺 ホテルでの「洗濯・乾燥」について。

出張時には大き目のレジ袋を持参して(きちんとたたむ)ホテルの室内で洗濯・乾燥しています。あくまで自己流ですので、偉そうにおすすめはできないのですが、以下にまとめておきます。

 

1.大き目のレジ袋をたたんだものを持ち歩いています。レジ袋の底辺の2つの角ははさみで切り取り、小さめの穴を開けておきます。

2.ホテルの浴槽もしくは洗面台で揉み洗い、もしくは押し洗い。洗剤は備え付けのボディーソープ。汚れの少ないときは、数分、ぬるめのお湯につけておくだけでよしとしています。熱湯だと縮む素材もあるので要注意。

3.洗濯物を手で搾ったあと、乾いたバスタオルに包んで、手で押す、もしくは足で踏んで水分をとります。手で搾るより数倍の水分がとれます。

4.レジ袋に洗濯物を入れます。ホテルに備え付けのドライヤーの熱をレジ袋に注入します。レジ袋の口は熱が漏れないように手でふさぎます。熱くなるのでフェイスタオルの上から押さえるといいかもしれません。

5.湿った熱はレジ袋の穴から出ていきます。袋の中では乾燥が進みます。完全に乾燥させることは望みません。明朝までに乾きそうだな、という程度。

6.ハンガーや浴室のカーテンレールなどに干します。ドライヤーの熱であたたまっていますので乾きやすくなっています。

 

アナログきわまりない方法でお恥ずかしい話ですが、ホテルの洗濯室を使いたくない、混んでいて使えない、洗濯機の使い方が分からないなどのときは、試してみて下さい。長期の出張や海外の旅でも、常に2泊分の着替しか持たないで済むのは、毎夜ホテルで、こんなふうに洗濯に励んでいるからなのです(^-^; 国内外問わず、飛行機を使うとき、荷物を預けたことは一度もありません。