Where we belong.=【家を知る・家に住む・この家で生きる】

そして、私たちの「居場所」について。

孤独のための椅子=【森の生活】。

 

 

 

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ソローはいいます。「質素な生活こそが、贅沢な生き方」。お金や便利さだけを望んでいるわけではないのに、人間は、どうしてそんなにあくせく暮らすようになったんだろう、と森の中で思索を続けるのです。いまと比べると、何もないに等しい時代に、湖畔で過ごした思索の日々。私たちがそこから学ぶことは、余りあります。

 

Contents.

 


品格あるルポルタージュとして

いろんな国のいろんな街を旅しました。

インドでは物乞いたちがうごめき、

死体が横たわる路地裏を歩き、

フィリピンのスラムでは、

貧しさのなかでも

懸命に生きる子どもたちの逞しい姿に

胸を打たれました。

 

ボルネオ、韓国、タイやラオス、

マレーシアやハワイ島の辺地も、いつも一人。

でも、ほんとうは、

少しでもそばに人の気配がなければ、

一刻として

旅を続けることのできない寂しがり屋なのです。

 

自然のなかに身を置くという境地にはほど遠く、

いつも生活の匂いが

ぷんぷんしている場所ばかりを歩いてきた気がします。

 

それでも、いつかは自然のなかで

ゆったりとした

時間を過ごしたいという夢はあります。

私だけではなく、

現代人全てが

ひそかに抱く夢といっていいでしょう。

 

街歩きも山歩きも

疲れてきたのかもしれません。

街からさほど遠くない里山なら、

という勝手な夢でもあります。

 

その夢を実現するのに、

具体的な示唆を与えてくれるのが

ヘンリー・D・ソロー

という人の書いた「森の生活」です。

 

目を閉じて、

どのページからぱっと開いても、

そのときの自分の生き方に

ヒントを与えてくれる1冊でもあります。

 

 

 

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ヘンリー・D・ソローは、1800年代中期、ウォールデンの森の家で自然と共に2年2か月過ごし、内なる自然と外界の自然、そして人間社会を見つめて膨大な日記を記しました。その日記をもとに一冊に編み上げたのが本書です。

 

邦訳は、古典の引用などから難解な書籍と言われていましたが、2004年に小学館から発売になった動物学者の今泉吉晴氏の訳本は、今泉氏自身が山小屋に30年暮らして、自然の側からの視点でソローの翻訳を続け、若々しく、読みやすく、示唆に富む内容になっています。

 

今回の文庫では、さらに豊富な注釈を加筆。深く読み込みたい読者に対しても魅力ある内容となっています。

 

新たに収録された写真と地図は、ソローの足跡(そくせき)をたどったH.グリーソンによるもの。ソローの文章と一緒に見ることで、ソローが感じていた自然を少しでも感じてほしいという訳者の意図によります。

 

社会の産業化が進み始めた時代に、どのようにソローが自然の中を歩き、何を感じていたか。現代に生きる私たちも少しでも感じることができるのではないでしょうか。

 

小学館HP〈 電子版情報 〉より

 

ハーヴァード大学を卒業したソローは、

故郷の街から

わずか2キロほど離れた

小さなウォールデン湖のほとりに小屋を建て、

清貧な暮らしを始めます。

 

この本は、そこで過ごした

2年2か月に及ぶ生活の記録です。

 

記録といっても日記のようなものではなく、

私には、鋭い観察力をベースに、

その地で培った哲学を織り込んで書かれた、

品格のあるルポルタージュのように思えます。

自分自身を内的に凝視した

ノンフィクションといってもいいかもしれません。

 


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簡素に、簡素に、さらに簡素に

ソローは、一人、湖畔で

自給自足に近い暮らしを送ります。

小屋は「かなり大きな森の端に位置する

リギダマツとヒッコリーの若木の明るい林の斜面」

に建てられ、一番近い隣人の家とは

1マイルも離れていました。

 

小屋とはいうものの、

ソローは「Cottage」ではなく

「House」という言葉を使っています。

 

「千個の古レンガで基礎を作り、

レンガ造りの暖炉に

漆喰塗りの壁からなる本格的な“家”」

だったことがうかがえます。

 

部屋は、台所、寝室、客間、居間を兼ねており

「暖炉こそ、家の最も大切な部分」

と考えたソローは

入念に暖炉をつくり、

冬の夜を炉辺で心ゆくまで楽しみました。

 

「私たちは、家を造る楽しみを、

大工に譲り渡したままでいいのでしょうか?」

という問いかけは、

現代に生きる私たちにとって鋭い投げかけです。

 

 

By Pixtabay.


 

自分の魂と向き合った日々

畑も耕しました。

インゲン、ジャガイモ、トウモロコシ、

エンドウなどですが、畑を

「魂を大切にして

今を生きる、私の生きるための方法の実験場」

と書いています。

 

午前中に畑仕事をし、午後からは、

散歩や読書、友人宅を訪問。

終日小屋に留まっているわけではなく、

森での暮らしは、

必ずしも孤独ではありませんでした。

 

日々の暮らしは

「食物、避難場所(住居)、衣服、燃料」

の4つ以外はほとんど不要で、

私たちは意外と、ささやかな道具・環境だけで

暮らせることを学ぶことになります。

現金も必要でしたが、

時々、地の測量、大工仕事などをして収入を得ました。

 

自分を自然の小さな部分と感じて、不思議な自由を味わいました。

(中略)

私は今宵の自然のすべての要素(雲り空、寒さ、風など)が私に親しくしてくれると、自分でおかしくはないかと思うほど強く感じました。

 

簡素に、簡素に、さらに簡素に生きましょう!

 

 

 

 

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思索・友・社会のための椅子

刻々と移ろう季節や自然の営みを観察し、

自分の「内なる音楽」に耳を傾け、

「生きるとは、私だけの実験」と考えます。

 

他人と比較するのではなく、

自分だけの人生を

生きることに意義を見出す

暮らしだったのです。

 

私はどんな人でも、私の暮らし方で暮らして欲しいとは思いません。

(中略)

私は誰もが最大限に自分を大切にして(中略)自分 の 生き方 を探すよう願っています。

 

19世紀半ばのアメリカは、

電信という最新コミュニケーション技術が開発され、

それまでのゆったりとした生活のリズムが、

スピードを増していった時代でもありました。

 

彼の自然への憧憬や文明批評、

自己との向き合い方が古びて思えないのは、

アナログからデジタル、

固定電話から携帯電話やスマホ、

手紙からSNS、書籍からインターネット、

人間の思考からAIへと

急速に変貌を遂げる現代社会に、

そのまま当てはまってみえるからです。

 

都会人でありながら「田舎暮らし」を実践した

その姿勢も、いまの時代にそのまま合致します。

  

「質素な生活こそが、贅沢な生き方」

 

ソローはいいます。

 

お金や便利さだけを望んでいるわけではないのに、

人間は、どうしてそんなに

あくせく暮らすようになったんだろう、

と思索を続けるのです。

 

 

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内なる音楽に耳を傾ける

 

あなたの歩調が仲間の歩調と合わないなら、それはあなたが、他の人とは違う心のドラムのリズムを聞いているからです。

 

私たちはそれぞれに、内なる音楽に耳を傾け、それがどんな音楽であろうと、どれほどかすかであろうと、そのリズムと共に進みましょう。

 

小屋には質素なベッドと食卓、机とランプ。

椅子もありました。

 

一つは思索のために、

二つは友のために、

三つは社会のために

 

と用意された小さな三つの椅子です。

 

そこにも、自然の移ろいを凝視しながら、

人間との交わりも

決してないがしろにしなかった

彼の姿勢が見て取れます。

 


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「家住期」と「林住期」の往来

古代インドでは、

人生を四つの時期に分けて考えました。

誕生から25歳までが

「学生(がくしょう)期」で、

何でも学ぶことが必要な時期。

 

25歳から50歳までが

「家住期」で働いたり、家庭を築く時期。

 

50歳から75歳までが

「林住期」で、現実社会からいったん離れて

自然のなかに身を置き、

独りになって

いわば、生活の足しにならないようなことを

真剣に考えてみる時期。

 

75〜100歳までが「遊行期」で、

自らの死に方について考える時期

…というものです。

 

ソローが森の生活を始めたのは

28歳のときでしたので、

彼は若くして「家住期」と「林住期」を

往来し深い思索をしていたことになります。

 

森のなかで生活を始めなくても、

ときには忙しい生活や行動を止め、

これらの「期」を行ったり来たりして、

思索を試みたのでしょうか。

 

常に、三つの椅子を自分のなかに

用意しておくことも、彼から学んだことです。

 

深い思索をするときには、孤独の椅子も必要です。

 

そのとき、自分が感じることを

そのまま受け入れることで、見えなかったものが

見えてきたり、

聞こえなかったことが聞こえてきます。

 

 

 

    

 

 

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おすすめ図書
 

 

 

 

 

 

 

 
 

世界中で翻訳されており、日本でも小学館文庫版(今泉吉晴訳)のほか、岩波文庫版(飯田実訳)、講談社学術文庫版(佐渡谷重信訳)などが出版されています。この機会に、ソローによる他の著作も読んでみようと思っています。

 

 

 

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