Where we belong.=【家を知る・家に住む・この家で生きる】

そして、私たちの「居場所」について。

知っていれば得をする「バリアフリー住宅」の考え方。

 

 

 

トイレイメージ

 

段差を解消して、手すりを付ければバリアフリー、と考えるのが、これまでの日本の住宅におけるバリアフリーの基本でした。しかし、生命に危険を及ぼすバリアは、目に見えないところから、目に見えていても、気づかないところまで幅広く身近に存在するようです。

 

Contents.

 

新築の家にも隠れている「バリア」

取材で新築の家におじゃますると、

たくさんのバリアが目につきます。

 

繰り返しますが、新築で、です。

 

ちょっと腰を痛めただけで、

靴を脱いだり履いたりできそうもない玄関。

手すりも椅子も、

椅子を置くだけのスペースもない。

 

片足をのせた瞬間、

ズルッと滑る玄関マットやキッチンマット、バスマット。

ツルツル滑る床、

急な階段でのスリッパ。

 

このスリッパは玄関、トイレ、キッチンにもあります。

 

端っこの部分で腰や肘を打ってしまいそうな手すり。

小さな子どもが頭をぶつけてしまうことあります。

 

少し膝を痛めただけで

昇降がきつそうな階段の蹴上げ、などなど。

 

撮影や取材でうかがって、

玄関を入った瞬間、家のなかに

足を踏み入れると同時に感じるバリアです。

 

お年寄りや介護を必要とする人がいるのに、

リビングや寝室と廊下、トイレ・浴室の温度差が

10℃以上もあるのは温熱環境のバリア。

浴室で年間14000以上の人が

亡くなっているのは、

屋内の寒暖差が原因といわれるヒートショック。

 

パジャマや寝間着で過ごせないほどの

寒さがある家は、

健常な人まで病気やケガに導き、

障がいを持った人はさらに暮らしにくい家といえます。

在宅介護も難しくするでしょう。

 

リハビリを阻むバリアもあります。

脳卒中で倒れ、運よく命が助かったものの、

数カ月のリハビリを経て

帰宅した自宅の原因がそのままでは、

何のための回復だったのかわかりません。

 

トイレ、浴室の温度が、

居間と比べて10℃以上も違う家では、

またヒートショックを生み出してしまうかもしれません。

 

 

 

認知症の母でも気づいたバリア

認知症の母親を自宅で介護したとき、

玄関のドアを開閉するスペースが足りずに

車椅子での出入りはできませんでした。

 

真冬になると、直したはずの玄関上の屋根から滴が流れ、

ステップを凍らせます。

凍結したステップは、母とデイサービスのスタッフ、

そして私を転倒させ、ケガをさせました。

 

100回の訪問介護より、

1回の外出を大事にすべきなのに、

我が家のように、

出入り口がバリアになっている家は

意外と多いようです。

 

立ち上がって一人でトイレに行くこともありましたが、

ドアが開けられないことも、

母との同居で初めて知ったバリアでした。

 

ドアノブを左右にグルグル回すだけで、

開け閉めする方法を忘れてしまっているのです。

すぐにレバーハンドルに変えましたが、

ドアを引き戸にしておけば、

こんな苦労はなかったのにと後悔ばかりでした。

 

せっかく樹脂サッシ+トリプルガラスに

交換した開口部は

母の力ではとても重くて開けにくく

重さのバリアがあることにも気づきました。

 

厚生労働省の人口動態統計によると

「家庭における主な不慮の事故」の死亡者数は、

年間1万4175人(2016年)。

同年の交通事故死者数は5278人ですので、

交通事故の3倍もの人が

家のなかで亡くなっていることになります。

 

転倒した場所では「庭」「居間・茶の間・リビング」

「玄関・ホール・ポーチ」「階段」「寝室」の順。

気を付けるべきは、

クルマでも屋外でもない、「家」なのです。

 

健康な生活を送る期間を示す「健康寿命」は、

2016年で男性72.14歳(同年の平均寿命は80.98歳)、

女性74.79歳(同87.14歳)。

健康寿命から平均寿命までの期間は「要介護期間」と

言い換えることもできます。

それが在宅介護の場合は、

その日から家族全員の生活に

大きな影響を及ぼすことになります。

 

このほか、スイッチ、コンセントは見やすく

使いやすいものに変更する、

加齢後は明るめの照明に切り替えるなど、

設備や照明器具に関しても、

少しの工夫で安全性を高め、バリアを解除することにつながります。

これらのことは今後も折を見て、詳細についてふれていきます。

 

 

 

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トイレのバリアもいろいろ。腰の痛いとき、膝の痛いときは、短い手すりが1本あるだけで楽です。車椅子を想定すると、ドアを開ける、ズボンを下げる、車椅子を回転する、便座に座る、立ち上がる、手を洗うときはどうなるか、などの視点で想像してみましょう。段差の解消、手すりも大事ですが、「狭さ」が最大のバリアであることが理解できます。

 

 

いざというときのための事前補強

日本の住宅は尺貫法のなごりから、

もともと屋内に多くの段差、

高低差がある構造です。

バリアフリーの代名詞が、段差の解消と手すりの設置ですが、

バリアは高低差だけではないことは前述したとおり。

 

特に高齢者や身体に障がいを持った人にとっては、

靴の脱ぎ履き、布団での寝起き、

浴槽をまたぐ・浸かる、トイレにしゃがむ・立ち上がる

などの日常動作が負担になり、

屋内での移動、屋内・屋外間との移動にも

十分な配慮がないと、

介助をする側にとってもバリアとなります。

 

段差を解消するだけではなく、

逆に40センチの段差を付ければ

腰掛けることもできます。

浴槽をまたぐのがつらいことを想定して、

半分埋め込む手法もあります。

 

玄関には最初からスロープを付けるか、

もしものときのために、そのスペースだけを確保する。

手すりも同じです。

最初から手すりだらけにすることより、

もしもの場合に設置できるよう、

必要と思われる部分を補強しておくだけですと、

新築時、コストの削減にもなります。

 

 

段差より手すりより「狭さ」を解消する 

見逃されがちなのが「狭さ」です。 

車椅子になった場合でも、

一人で利用が可能なトイレや浴室。

 

在宅介護の際、

介助者がケアしやすい動作空間を確保した寝室。

身体に障害を持ったときに

両側に手すりを設置してもスムースに

移動できる廊下や階段――など「狭さ」を

バリアと捉えた対処をすることで、

健常者の暮らしも

快適になることに私たちはなかなか気づきません。

 

広さは、あとで仕切ったり、

棚を置いたり、モノを飾ったりで

何とでもできますが「狭さ」を解消するには、

広くするほかはありません。

柱や壁はそう簡単に動かせるものではなく、

あとになって広さを確保するのは大き目の工事になります。

 

街なかや公共施設のバリアフリートイレを

使ったことがありますか。

 

車椅子でも使用できるトイレですが、

障がいを持った人だけでなく、

健常者にも使いやすいことがわかります。

 

新築やリフォームの際にも、

「車椅子を使うとしたら」という前提で

計画に臨むと日常でも使いやすく、

障がいを負ったときにも

安心な空間が実現しやすくなります。

 

展示場などの見学の際には、

この部分で車椅子を使うとしたら、回転できるだろうか、

すれ違うことが可能か、

介助する人の使い勝手は…などを想定しながら

スケールを想像すると、おおよその見当がついてきます。

繰り返しますが、

車椅子でも使いやすい空間は、健常者にも使いやすいのです。

 

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躯体全体を断熱化することで屋内の温度分布はほぼ一定となり、廊下はpのずと不要となる。間仕切りは引き戸が開閉がスムーズでドアよりもスペースをとらずに済む。こういう空間は動線そのものが意味をなさなくなり、おのずとバリアフリーの空間となっていく。

 

家の内外の動線は短く太くが原則

リビングや寝室からトイレ、

浴室などへの動線は短く、太く(幅)が原則。

外から家への動線も同じ。

 

寝室、トイレ、浴室などの広さ、廊下やドアの幅なども

車椅子の使用を想定します。

 

ほんとうは、廊下などはないほうがよいのですが、

躯体全体の断熱性能を高めることをせずに、

居室ごとに冷暖房をしてきた日本の家では、

寒い・暑い→広い面積は暖まらない・涼しくならない→

居室ごとに間仕切りをする

→居室ごとに温度が異なり、居室ごとに冷暖房設備がいる

→居室と居室をつなぐ廊下ができる

→廊下やトイレ・浴室などは居室ではないので冷暖房設備を入れない

→温度差ができるヒートショックや結露の問題が解消されない、

という図式が繰り返されます。

 

どうしても廊下をつくる場合

(廊下は不要というのがこのサイトの基本です)は、

90センチ幅では到底使いづらく、

120センチでもつらいくらい。

可能であれば140センチ幅くらいにすると、

車椅子の回転も可能で、介助も楽です。

 

実際に使うことがなければそれはそれでいいのですから、

幅が気になる場合は、

文庫本を置く薄めの本棚など設置するのも方法です。

 

階段(幅・蹴上げ高)は身体が不自由になったときを考え、

一人で昇降ができるかどうか。

両側に手すりを付けたら、どのくらいの幅が必要かなど、

車椅子でなくとも、

腰が痛いことを想定してみるだけでも、

多くの課題が見えてきます。

 

片側だけの設置でいいわけではなく、

できれば両側に手すりがあるのが理想。そう考えると、

今度は幅の課題も浮上してきます。

 

今回は具体的なスケールの提示はやめておきますが、

こうした視点を持つだけで、

健常な人にもゆったりと大らかな空間となり、

加齢後も余計なリフォームの必要のない

暮らしやすい住宅に近付けるのです。

 

 

www.ienotomo.com

 

 

 緑イメージ

 

 

 

 
おすすめの本
 

住宅のバリアフリーに関しては、たくさんの書籍が出ています。
しかし、一般論に終始している内容が多いのは、実際に生活する場でのバリアの捉え方が、そこに住む家族の身体状況、性格、性別、年齢、体格、障がいの有無などによって、大きく異なるからです。
社会学者の上野千鶴子さんががんの在宅看取り率95%を実践する医師に「ひとりで家で死ぬ」ために67の質問をしてまとめたものです。
医学的、福祉的、制度的なものが網羅されていますが、残念ながら、建築環境的な素材が不足しているといわざるを得ません。
しかし、この1冊で少子高齢社会における独居世帯での在宅看取りに関する情報の多くが把握できます。
どんな人でも、最後は一人暮らしになる可能性を持っています。手元に置いておくだけでも、貴重な資料になります。
 
 

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