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家を知る・家に住む・家で暮らす、そして私たちの居場所について。

土間の「間」を現代の住宅で応用する。

 

 

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住居のはじまりは「土間」から

昔の町家や農家にうかがうと、土間が広くとられています。土の間、つまり土でつくられた空間ですが、土といってもただの土ではありません。土や砂利に石灰、ニガリなどを混ぜ、固めたもので、3つの材料を使うことから、三和土=たたきと呼ばれます。たたきというくらいですから、何度も何度も叩いて固めたのでしょう。

 

農家では作業場であり、台所であり、作物の保存場所としても活用された土間は内庭とも呼ばれました。

町家では通り庭ともいい、ウナギの寝床と称される細長い家のつくりの奥へと移動する通路の機能もあります。昔は、勝手口の前方にかまどが設置されるケースが多かったため、玄関を入り、そのまま靴を脱ぐことなく荷物を台所に運べる利便性がありました。

 

土足で利用するため、三和土だけではなく、タイルやコンクリートで仕上げられることもありますが、それだけ家事や作業には、汚れや水、火を気にせずに使え、安全性も高いことがわかります。

「座式」の生活が主流の日本の住まいでは珍しく「立式」のスペースですが、この空間も次第に「座式」の内の空間に組み込まれ、いまでは見ることが少なくなりました。

 

いつのころから、土間がつくられたのでしょう。

明確な答えはないものの、縄文時代からさらに時代をさかのぼり、家らしきものができたころから、といってもよいでしょう。家のはじまりは、土の上に雨露を防ぐ屋根「らしきもの」をかけただけだったはずです。

旧石器時代で火を扱う炉は屋外でしたが、炉の場所は徐々に屋内へと移動し、暖房や照明の役割を担うようになり、今度はかまどなど台所の機能を持つようになります。

 

時代が変わるに連れて、土間の上に何かを敷く生活が生まれ、土間と区別した板張りの空間が内部にできます。

板の間で過ごす時間が長くなり、そこで寝るようになると、外の汚れを持ち込まない習慣が生まれ、それらが「床」として発展。次いで、床の一部に畳が敷かれるようになり、和風住宅の様式が形成されていくのです。

 

西洋では、寝るための床の敷物がベッド=家具となり、日本では敷物が板張りの床として変化しました。こう考えると、土間こそが西洋と日本の住まいの文化の分岐点になったといえそうです。

 

 

 

 

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外でもない内でもない緩衝地帯があることで空間に臨場感が得られる。

 

人と人との駆け引きの場でもあった

外のようで外ではなく、内のようで内ではない。土間は半分外のようで家の「内」にある空間です。

 

囲炉裏は床の上にありましたが、かまどや水置き場は土間。土間と床上を行き来しながら台所仕事が行われました。

お隣さんが来ると、土間で立ったまま家人と話をし、話が長くなると、框に腰かけて会話をするなど、土間は人の関係を保つ空間、家のなかに入れようか、どうしようかと迷って駆け引きをする場でもありました。

 

しかし、最近の土間は靴を脱いだり履いたりするだけの場所となり、作業のできるような土間を見かけることが少なくなりました。自然とのつながりも分断されてしまったのです。

 

外でも内でもない曖昧なゆとりは消失し、お客さんは玄関に立って、長い間、話をすることも許されません。土間で漬物を漬けたり、大工仕事をするなど、作業をすることもできません。

地方の取材では、近所の人が来たとき、長い時間、滞在されないようにと、あえて土間をなくす住宅を多く見かけました。

家のかたちだけでなく、近所づきあい、人とのつきあい方も変化しているのです。

 

こう考えていくと、土間の機能を床に移し過ぎてしまったかのような印象もぬぐえません。床に座る、寝るなど生活の大部分が土間から板の間、畳の上に移り、土間だけであった歩行するための空間、経路も床の上に変わってきたのです。

その名残は玄関に残っていますが、靴を脱ぐ場所に限定するにはもったいない気もします。

 

土間を日曜大工の作業場にする、趣味の雑貨や小物のアトリエ、食品庫、アウトドア関連の物置、ドッグランにと、開放的で曖昧な空間だからこそ、日々の暮らしに変化をもたらし、暮らしの楽しみ、奥行きを与えてくれます。

広めの土間を設けることで、玄関からリビングをつなぐ通り空間だけでなく、セカンドリビング、セカンドダイニングとしての使い方もできます。テーブルを移動して週末の夕食、休日のランチを楽しむことも素敵です。

 

土間 ストーブ

キッチンは土間に。家族みんなでダイナミックな料理の時間。

 

曖昧空間のよさを現代に生かすには

外と内の間に「間」を与えることで、外の光や風の恵みを屋内に引き込むこともできます。

異なる領域がつながれた部分は、文字通りの「間」。ここは何をする場所、あれをするところなど場所に機能を意味づけるのではなく、何にでも使える機能が「間」のゆたかさです。グラデーションといってもいいのですが、この曖昧さが日本の伝統家屋の特長で緩衝地帯ともいいます。

 

土間を設ける際は、昔のように三和土でつくるだけでなく、タイルやレンガ、コンクリートを打って仕上げることもできます。

日差しを導き、土間に蓄熱することで、日没後から翌朝まで、日中に蓄えた熱を放熱する仕組み(ダイレクトゲイン)をつくることもできます。

土間とリビングなどのパブリックを一体化させれば、冬期間は日中のお日様で土間が暖められ、暖かい空気は2階に上がって、屋内全体を暖めることに貢献します。

いわば自然の空調ですが、土間にストーブを設置すると、蓄熱効果はさらに向上し、補助暖房としても活用できるでしょう。

 

外とのつながりをとるようにすれば縁側のように、外でも内でもない空間ができますし、夏期はオーニング、すだれなどで日差しを遮れば土間から涼しさを屋内にもたらすこともできます。

通り土間の場合は、天窓など開口部の設置を工夫することで、風の通路をつくることができ、猛暑の夏にも涼しい空間となります。

このように、光や熱、通風などの自然のエネルギーを取り入れる設計をパッシブデザインといいます。

 

 

 

 

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畑仕事を終えて、そのまま家のなかに入れるようにと土間を設けた。家のなかに「外」の一部を混在させることで生活の機能が増幅される。


 

仕事でも日常でも、靴を履きっぱなしの時間が当たり前のようになった現代だからこそ、土間はもっと見直されてもいいのではないかと思うのです。少し大袈裟かもしれませんが、庭と家との「間」にあることで、自然界と家とを結ぶ役割を果たしてくれる機能があるのです。

 

曖昧ついでに、土間と床の仕切りは引き戸を考えます。オープン・クローズが自在な引き戸は、世界で日本にしかない固有の建具。壁にもなり、開けることもできる建具は、土間のある風景の変化を日々楽しむことを可能にします。

ほんの数センチ、土間と床との高低差を設けることで、垂直方向のリズム感が創出されるでしょう。

 

家族みんなの空間であり、ときにはお父さん、ときにはお母さん、子ども、訪問者の空間ともなる空間はまさにパブリック空間であり、このどっちつかずの機能こそ土間の醍醐味といえます。

これもできる、あれもできる、といった大らかさこそが魅力。そこを理解し見直すことで、家のデザイン、間取り、暮らし方も大らかに変化していくはずです。

 

何にでも使える融通性に富んだ空間は、生活にゆとり、ゆたかさとを醸成してくれるはず。お金やモノの数で決められるゆかたさではなく、原っぱのように何にもないところだけど、何でもできる可能性に満ちた空間ともいえましょう。

 

昔と違って、戸建てを建てるにも土地の価格は高くなり、狭小の敷地、建物しかできなくなっているのも実情です。

伝統的かつ開放的なかつての日本家屋は難しいかもしれませんが、土間の「間」の根底にある考え方は、いまも私たち日本人の住まい、暮らしに多くの示唆を与えてくれるはずです。

 

 

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