Where we belong.

家を知る・家に住む・家で暮らす、そして私たちの居場所について。

軒あるいは庇の効用。

 

 

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日本は世界有数の「雨の多い国」

日本語で雨の呼び名を数えると、400種類ほどあるといわれます。

ちょっと調べてみますと、春の雨だけで、春雨(はるさめ)、紅雨(こうう)、菜種梅雨(なたねつゆ)、発火雨(はっかう)、卯の花腐し(うのはなくたし)、五月雨(さみだれ)、梅雨(つゆ)など、同じ雨でも、降る時期や降る様子によって細かく表現されてきたことがわかります。

俳句では、

さみだれを 集てはやし 最上川(松尾芭蕉)

さみだれや 大河を前に 家二軒(与謝蕪村)

 

などの句が有名です。

浮世絵ですぐに思い浮かぶのは、歌川広重の名所江戸百景「大はしあたけの夕立」。にわか雨の降る光景が繊細に描かれ、あの天才ゴッホが模写して学んだことでも知られる作品です。

 

国土交通省HP(河川局トップ > 災害の記録> 水害対策を考える)には次のようなデータが記されています。

世界でも多雨地帯であるモンスーンアジアの東端に位置する日本は、年平均1718mmの降水量があり、これは世界平均(880mm)の約2倍に相当する。しかも、日本の降水量は季節ごとの変動が激しく、梅雨期と台風期に集中している。例えば東京の月別平均降水量は、最多雨月の9月で208.5mm、最少雨月の12月で39.6mmと、その差は5倍に達する。

年間降水量ランキング1位は高知県3659mm、2位鹿児島県で2834mm、3位宮崎県で2732mm(都道府県格付研究所 都道府県別年間降水量ランキング)。東京の年間降水量は1500ミリ前後ですが、多いところはその2倍以上に達しています。ちなみに、雨の多い印象のある英国のロンドンなどは、750ミリ台でしかありません。

 

 

 

 

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深い軒は雨などから外壁の汚れ、傷みを防ぎ、強い日差しを遮る効果がある。

 

日本は、暑さのきびしい国でもあります。

世界地図を拡げ、日本のほぼ中心を横断する北緯35°を西に移動していくと、アフガニスタンをはじめイラン、イラクといった中東を通り、アフリカ北部にまで達することがわかります。

アラビアンナイトの国々のように砂漠地帯こそ少ないものの、暑さがきびしいのも納得です。

逆に、東北や北海道から西に移動すると、地中海に行き着き、ロンドンやパリは、北海道よりずっと北にあることがわかります。

日本は九州まで降雪がありますが、多くはヨーロッパより南に位置しているのです。

 

2018年のデータ(気象庁)によれば、日最高気温の最高で40℃を越えた地点は10カ所。埼玉、岐阜、高知と続きますが、真夏になると、毎日のようにこれらの地域で最高気温が更新されるニュースを目にします。

ちなみに、テヘラン(イラン)の最高気温は7月35℃、8月36℃と日本の暑い地方よりも気温が低いのです。

日本とイラン、砂漠…とイメージは結び付きませんが、北海道は亜寒帯、沖縄は亜熱帯など、さまざまな気候が混在している日本。それだけに家のかたちや考え方、生活文化も多岐にわたってきたのです。

 

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玄関先の庇は雨や雪の日の出入りも濡れずに済んで安心。玄関回りの汚れも軽減してくれる。

 

伝統建築では必須だった軒と庇

雨を防ぎ、強い日差しを防ぐ役を果たしているのが屋根です。勾配のある屋根は、雨をさばき、夏の日差しが室内に入り込むのを防いでくれます。

水平ラインの美しい屋根のかたちは隣家とのつながりを意識することで景観の醸成にも貢献。数寄屋造などは単体で建っていても、屋根の形状だけでも優美です。

その屋根の部分が外壁から外側に出っ張っている部分を軒といい、主に窓やドアの上に取り付ける出っ張りを庇といいます。

 

 軒 

 

日本の建築技術は中国の影響を受けながら発展してきましたが、深い軒は中国ではあまり見られず、日本ならではのものといえます。

法隆寺金堂は4メートルもの深い軒を持ち、1300年以上も前にすでに現代の構造力学にもかなう工法が体現されていたことを裏付けています。

地方に点在する古民家を見学すると、ほとんど全てで深い軒が設けられ、その名残を探すのは難しくありません。

屋根の延長として雨を除け、外壁が濡たり、汚れるのを防ぐよう配慮慮されたのは高温多湿の気候によるもので、雨の多い日本だからこそ生まれた建築の知恵であり工夫といえましょう。

 

 

 

 

軒

古民家の軒は古くて新しいパッシブデザイン。

 

季節の日射のコントロールする装置として

夏は高い位置を太陽が周り、日照時間は長くなります。冬の太陽は低い位置を周り、日照時間は短くなります。

夏は高い位置から長時間建物全体が強い日射を浴び、冬は短い時間ですが、低い位置から日射が入ってきます。そうした日射の特徴を踏まえ、コントロールをする知恵も生まれました。

夏は日射は遮り、冬は日射は取り入れる。軒を長くすることで太陽高度の高い夏場の日射は遮ることができ、高度の低い冬場の日射を導くことができるのです。

 

窓や出入口の上に庇を付けると、その部分に小さな屋根と軒の機能ができ、雨の日でも窓を開けられ、強い日射を防ぐことも可能です。

もっとも、軒や庇だけで夏の強い日射を100%遮るのは難しく、すだれやよしずだけでも防ぐことはできません。

オーニング(日除け)などと組み合わせた設計をすることで、効果的な日射のコントロールが可能になるのですが、専門的には地域ごとに日照時間や日射角度をインプットしながら計算することになります。データは気象庁、気象台などから入手することができます。

 

 

 

 

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深い軒を設けることで、高い位置を回る夏の日差しが室内に入り込むのを遮り、冬の低い角度の日差しを導くことがわかる。

 

 

内のような外のような「軒下」を楽しむ

軒の深さにもよりますが、長めの軒をつくることで、軒下には半屋外空間が生まれます。屋根のある屋外の室内側の空間、といったイメージです。縁側がそうであるように、外でも内でもないこうした空間を緩衝地帯といいます。

 

テラスにも屋根とは独立した屋根がるのがふつうですが、洋風の印象が強く、軒下には日本の伝統的が香るといったら、先入観が強すぎるでしょうか。

 

軒下からウッドデッキを伸ばすと家側から屋外まで使えるスペースが確保でき、その割合によって内的要素の強い外、外的要素の強い内など自在な使い分けができそうです。

軒下部分に縁側を設けて庭を眺めるなどの工夫も素敵です。

隣家との距離や敷地の関係でゆとりのある軒下空間ができない場合は、部分的に庇を設け緩衝空間をつくることも可能です。この場合は、テラスに近いつくりになるかもしれません。

 

近年では住宅の高断熱・高気密化が進み、雨風、日射などの制御を細かくせずとも、躯体性能と冷暖房設備で、あたかも力ずくで快適さを確保する家も垣間見えます。

屋根にも軒や庇、軒下にまで日本の気候風土、生活文化に基づいた理屈があったのですが、技術で全てを解決してしまうのでは少しもったいない気もします。

 

都市部では、軒の出のない箱型の家が急増しており、縁側をつくる家もあまり見かけません。デザイン優先の家に多い印象を受けます。

もちろん、全てがそうではないのですが、軒のない住宅では雨漏り事故のトラブル発生率が通常の5倍になっているというデータもあり(日本住宅保証検査機構 JIO 2016年)、特に片流れ屋根の軒なし住宅での事故が多いことが報告されています。

 

日本固有の気候風土や伝統・文化を顧みることなく、個性化を主張するためだけにデザインを追求した結果でもあるのでしょう。

 

軒がない場合は外壁は雨風にさらされる時間が多いのは当然のことで、その分、外壁や窓周りの雨漏りの危険性が増すのは、誰が考えてもわかることです。

 

そうしたリスクを見越して、対策が考慮されていればいいのですが、そのあたりでのデザイン力、技術力、万一の場合のメンテナンス体制とのバランスが重要になってきます。

なにより、そうした建物が増えていくことで、急に雨が降ってきたときなど、軒下で雨宿りという光景も少なくなっていくのがさびしい気がします。

 

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最近は軒が短いか、まったくない住宅も珍しくない。季節の日差しを緻密に制御するだけでなく、室内の環境にも影響を与えるだけに、積極的に設置を検討したい。

 

 

www.ienotomo.com

 

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